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2014年12月07日

気持ち悪い

141207.jpgジャポニカ学習帳の表紙から昆虫の写真が消えたそうですね。その理由は、親や先生の「きもい〜」というクレームとのこと。知らんがな、そんなこと! 子どもではなく、親や教師がしゃしゃり出て、‘気持ち悪いからなくせ’と言う感性。そして、こんなアホな主張にいちいち反応するメーカー…。この国、本当にヤバいです。
僕は以前、某サイトで顔出し写真入りの記事が掲載されたところ、スポンサーの女性社員さん一同から「気持ち悪い〜」とブーイングを受け、そのことをまとめ記事で公にされた嬉しい…、もとい悲しい過去があります。また、打ち上げでご機嫌に呑んでいただけなのに、またまた代理店の女性社員さんから「気持ち悪い〜」というクレームを受けたこともあります。
もちろん法にふれたり、迷惑になるようなことはしていません。要は存在自体に問題があるワケで、ジャポニカ学習帳の法則に則ると、僕も消えなければなりません。
僕はともかく、昆虫は気の毒です。大体、現在の地球上で最も栄えている生物は昆虫といわれるくらいですから、人間なんぞがとやかく言うのは度が過ぎています。

“度が過ぎている”“気持ち悪い”という言葉で思い出したのが、『ランボー 最後の戦場』。
ランボーという名前を見ただけで鼻で笑った人、ランボーとスタローンに失礼です! 確かにシリーズ2作目の『怒りの脱出』と3作目の『怒りのアフガン』は失笑ものですが、1作目とこの4作目は必見の映画です。
1作目は、逃走劇における“途中で逃亡者と追跡者の立場が逆転する系”の傑作。そして『ランボー 最後の戦場』は、人体破壊系の最高峰といってもいいでしょう。還暦を迎えてデップリしたランボーが撃ちまくるマシンガンによって人の体が弾け、肉片が飛び散る様がこれでもかと描かれているのです。そのグロテスクさは、完全にハリウッドのメジャー映画のマナーを超えています。何を思ってスタローンがこのような描写にこだわったのかは分かりませんが、観ていて単純に“怖い”“戦争はアカン”と感じます。そして、何より映画としておもしろい。
また、任務を終えたランボーが向かうところを見ると、胸を打つものがあります。この悲壮感と虚無感、国に対するアンチの姿勢は、1作目と共通するもの。そういう意味でもこの作品は、1作目と直結する続編といえるでしょう。

ジャポニカにクレームを出すような怖い人がいるのでいっときますが、人体破壊を人に見せろといってるワケじゃないですよ。

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2014年06月17日

『グランド・ブタペスト・ホテル』

140617.jpg仕事帰りにウェス・アンダーソンの『グランド・ブタペスト・ホテル』を鑑賞。
レイトショーということで「ヤバいなぁ」と思っていたら案の定、開始早々に夢の中へ。映画がおもしろくないということではなく、単に僕サイドの責任です。もう最近、暗闇の中で2時間目を開けておくのが無理なようで、デカい宇宙戦艦がドンパチしても、アメコミヒーローがバタバタと悪党をなぎ倒しても、サイコキラーが目を覆うようなアカンことをしても、僕の眠気をどうにかしてくることはないようです。
ということで、今回もコマ切れの記憶しかなく、かなりあやふやなのですが、観た感じ、いい意味でも、そうでない意味でも「作り込んだなぁ」という印象。画面の構図、美術、役者の芝居はもちろんのこと、今回はスクリューボールコメディ的なストーリー展開も加わり、「ウェス・アンダーソン映画、ここに完成!」といった感じなんですが、いかんせん、隅から隅までスキなく計算されていて息苦しい。正直、途中からちょっと胸ヤケがしました。(もしかしたら直前に食べた濃厚豚骨ラーメンがもたれていたのかもしれませんが、半分寝ていたので定かではありません)
そもそも話自体が、語り部である老作家が・若かりし日に出会って聞いた・謎の富豪の昔話という3層構造になっていて、おもしろいんだけれどダイレクトに響いてこない。(もしかしたら単に僕の頭の回転がにぶいだけなのかもしれませんが、半分寝ていたので定かではありません)
個人的には、もっとスキがあった『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』や『ライフ・アクアティック』の頃の方が好きです。ビートルズの「ヘイ・ジュード」をバックにタカが空を飛ぶシーンや、海洋探検隊が行進するシーンなんて、意味なく涙が出てくる。また、あんな説明できない感動のある映画を観たいものです。

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2014年05月08日

祝『ゴースト・バスターズ』30周年

140508.jpg世の中、周年イベントが多過ぎる。
50周年や100周年なら、「ほぉ、そうなんですか」と思わないでもありませんが、3周年とか7周年とか、何の節目でもないですやん。しかも、周年記念でおトクなサービスを提供してくれるでもなく、ヘタしたら都合の良い在庫処分セールじゃないの?というものもあったりしてカチンときます。
映画や音楽業界でも公開・発売○周年とかいって、ちょこちょこいじくったリマスター商品を売りつけていたりするのをみると、ちょっと気にはなっても「意地でも買ってやるものか」という気持ちになります。

でも、『ゴースト・バスターズ』30周年と聞けば、敵の策略にはまってやってもいいかなと。だって、楽しいじゃないですか。個人的には『ブルース・ブラザーズ』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と並ぶ、「3大C&Cムービー」のひとつとに認定しています。(C&Cムービーとは、コーラ&キャラメルコーンがすすむ映画のことです)
というワケで、この機会にほぼ30年間見つづけたVHSテープからDVDに買い替え、ひさびさに鑑賞。
ストーリーはかなりいい加減ですが、落ちぶれた大学教授がお化け退治のベンチャー企業を立ち上げるとか、緊急用のすべり棒のある古ぼけたビルをオフィスにするとか、メカメカしいガジェットを装備するとか、設定がサイコーにイカしている。キャストもビル・マーレーを筆頭に、絶妙のコンビネーション。シガニー・ウィーバーは『エイリアン』での下着姿にはピクリとも反応しませんでしたが、本作の彼女には「夜ばいで童貞をうばわれてもいいかも」と思ったものです。

で、映画会社からの30周年のプレゼントはというと、パート3。今年中の公開を目指しているそうですが、製作は迷走中。パート2がかなりのズッコケだっただけに複雑な気分です。
また、レゴからはオリジナルメンバーとECTO-1のセットも発売予定。(オフィスビルもつけてほしかった…)
この夏はゴースト・バスターズのロゴTシャツをRUN D.M.CのTシャツ感覚で着て、もり上がろうと思います。

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2014年03月26日

めまいがする春休み

140326.jpg世の中はエロとビッチが変える。
そのことをハーモニー・コリンの目下最新作『スプリング・ブレイカーズ』が教えてくれました。
本意かどうかはともなく、物理的に仙人レベルの生活を送っている僕は、イマドキな女のコのライフスタイルに関してとんと無知なのですが、こんなことになってたんですね…。
田舎の大学生活に退屈しきっていた4人の女のコが刺激を求め、春休みにフロリダへ行くという普通のストーリーなんですが、内容が普通じゃない。まず、旅行資金がないので水鉄砲とスパナを持って、ダイナー強盗を決行。(ダイナーを襲うロングショットの長まわしはグッド)犯行後のあっけらかんとした姿は、まるでコンビニで唐揚げを買ったような感じでコワい。
いよいよフロリダに着くと、そこは連日連夜、音楽、アルコール、ドラッグ、セックスが入り乱れる極楽なのか地獄なのかわからない世界。
たまにアメリカ映画でこういう乱痴気騒ぎを見ますが、ホンマにあるんですか? あるなら死ぬまでに一度、あの揺れるバストで頬をしばかれてみたいものです。
前半はハイテンションで旅行を満喫したおすものの、徐々に雲行きがあやしくなってきて…という展開は定石。ただ、結末は再びビッチ炸裂! あきれるのを通りこして、さわやかというか元気が出てきます。

ハーモニー・コリンは、世間からうとまれる人たちが秘めた美しさを描き出すという今までの持ち味を活かしながら、より多くの人にアピールする術を手に入れた様子。彼の詩情性とブノワ・デビエの極彩色あふれる映像が合わさった世界観は一見の価値あり。チンピラを演じたジェームズ・フランコもグッジョブ!
オススメはしませんが、今の季節にピッタリの映画です。

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2014年02月25日

『スノーピアサー』

120226.jpg今年は2月に入ってからおもしろそうな映画が目白押し。限られた時間とお小遣いの中でどれをチョイスするか、仕事より悩んでしまいます。
とりあえず、いま観とかなアカン監督No.1のポン・ジュノ最新作『スノーピアサー』へ。
舞台は2031年。地球温暖化をストップしようと何やかんやしたら逆に氷河期がやって来て、残された人類は永久エンジンで走り続ける列車「スノーピアサー」に乗っている人たちだけに。この列車にはカースト制が敷かれていて、後ろの車両には貧困層がすし詰め状態で暮らし、前の車両では富裕層がラグジュアリーな暮らしを満喫しおり、「もう辛抱ならん!」と貧困層が革命を起こすという、大胆というか結構無理のある設定。(原作はフランスのコミックとのこと)
デストピア&密室劇という難題をポン・ジュノがどう料理するのかが、この映画の最大の見所。
結論から言いますと、おもしろい。
単調になりがちな密室劇ですが、車両を移動し、そこでいろいろな出来事が起こすことでクリア。さらに先頭車両にボスキャラと列車に関する謎の答えが待ちかまえていることが分かっているので関心が持続するし、舞台が列車であるべき仕掛けもあったりする。
これだけお楽しみ要素がテンコ盛りだと普通は破綻して、底ヌケ脱線大作になるんですけど、見事にまとめきっています。
役者もジョン・ハート、エド・ハリス、ソン・ガンホなど、渋くて濃いメンツが集結。あり得ない世界に説得力を与えています。
デストピアムービーの名作『1994』に引けをとらない力作です。

ところでこの映画には革命側の人たちと支配側の人たちとの戦闘シーンがあるのですが、僕はこういうシーンを見ると居心地が悪くなります。それは残虐な描写に眉をひそめているワケではなく、もし自分がこの場にいたら目立たないように後ろでモゴモゴ動いているフリをして、みんなが突撃した隙に隠れるに違いないと思うからです。情けないとは思いますがコワイんだから仕方ない。まぁ、そういう輩に限って惨めな最期をむかえるんですけどね。

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2014年01月08日

瑞々しい感性を持ちつづけるベルトルッチ

140108.jpg40を過ぎたあたりからケガの治りが遅くなっているような気がします。秋口に擦りむいたところも長い間かさぶた状態がつづき、今もうっすら黒ずんでいる。認めたくありませんが、確実に肉体的劣化が始まっています。
この調子なら、目に見えない感性も衰えていると考えるのが自然。そういえば、新しいミュージシャンや俳優の名前がまったくおぼえられないし、学生服を着た子が中学生か高校生かの見分けもつかない。ちょっとヤバいかも…。ただ、レンタルするAVに出演している女優の年齢が高いのは今に始まったことではなく、僕の好みなので問題ないでしょう。
いずれにせよ、肉体も精神も錆びつかないようにお手入れする必要があるのは間違いありません。

そんな誰のもとにも忍び寄る精神的劣化を微塵も感じさせないのが、ベルナルド・ベルチルッチ。『ドリーマーズ』以来、約10年ぶりの作品となる『孤独な天使たち』で、御年72歳とは思えない瑞々しい感性を見せつけられてビックリすると共に感動。『ラストエンペラー』以降、悪くないけど特に良くもない作品が続いていましたが、快心のカムバック作となりました。
物語は、中2病真っ最中の男子、ロレンツォが学校のスキー旅行をさぼって自宅マンションの物置部屋に忍び込み、大好きな本や音楽を満喫する計画を実行するところから始まります。このシチュエーションだけでもワクワクしますよね。僕も小学生の頃、家の押し入れに隠れて、駄菓子を食べながらコロコロコミックを読みまくるというプチ家出をしたことがあるので、胸がキュンとします。(この時は、しびれを切らして足を伸ばした時に戸にぶつけ、その音でバレました)
そんな楽しい時間をロレンツォが堪能しようとした矢先、偶然、腹ちがいでジャンキーの姉が部屋にやって来て…という展開に。
ストーリーがどうのこうのというより、この年齢特有のひん曲がり具合がリアルに、そしてキュートに描かれていて、観ているうちに胸の奥がワサワサしてきます。
このワサワサ感は何だろうと考えてみたところ、子ども時代をふり返っているのではなく、自分の子どもがむずかしい年頃になった時、親としてどう接するのかという思いから来ていることが判明。やっぱり、もう、子どもの気持ちに返るのは無理ですね。
それと、テーマ曲になっているデビッド・ボウイの「スペイス・オディティ」の素晴らしさも改めて実感。
オヤジどもに観てほしい映画です。

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2013年11月12日

どこにフォーカスをあてるか

131112.jpg電車に乗っていた時のこと。吊り革を持ち、心地良くゆられていると、おっさんの乾いた声が鼓膜を突いてきました。声のボリューム、語気からして明らかに一線を超えた‘あっち側の人’です。ものごっつ声の主を確認したい思いにかられましたが、一応僕も大人です。ニヤついた顔をご本人に晒すようなことはできません。知らんふりをして、耳をそばだてるのが大人のマナー。
しかし、おっさんはそんな僕の気遣いを完全に無視して、独り言をヒートアップさせるではありませんか。
何を言っているのか知りたいのですが、六代目 笑福亭松鶴のような口調のため、はっきりと聞き取れない。ふと、近くに立つ男性に目をやると、彼はおっさんをガッツリ見ていて、今にも吹き出しそうな顔をしています。もう我慢できない。振り返りおっさんを見ると、意外にまとも。
‘ちょっと変わった人’レベルかとガッカリして、iPodのヘッドフォンを耳に突っ込もうとしたその時、おっさんが窓に映った自分に話しかけていることに気づいたんです。
そうと分かった瞬間、今まで聞き取れなかった言葉がスーッと入ってきて、おっさんは独り言を言っているのではなく、もう一人の自分と会話をしていることが分かりました。しかも、声色や口調も微妙に変えていて、そこら辺の落語家よりも臨場感がある。見ようによっては、芸に取り憑かれた人にも見えないこともない。
でも、話の内容は、遠い親戚の娘がブサイクというつまらんもので、おっさんへの興味もなくしてしまいました。

この話で何が言いたいのかと申しますと、意識のフォーカスのあて方についてです。今回のケースでは、おっさんがフレームの外にいた時は‘単なる変なおっさん’で、ファインターをのぞいた時は‘おもろそうなおっさん’ に変わり、ピントを絞るにつれキテレツ度を増し、最後は興味をなくして再び風景になったワケで、同じものを見ていても、どこにフォーカスをあてるかで意味が違ってくる。
そんな当たり前のことを改めて実感し、僕は『ロボコップ』(オリジナル版)を思い出しました。「まさに、おっさんと同じではないか」と。
この作品は、殉職した警官がロボットとして蘇り、悪いヤツらをやっつけるという、実にバカバカしい作品です。かなりヒットしたので、ご存知の方も多いでしょう。
一般的なイメージは、‘ハリウッドのベタなヒーローもの’といったところではないでしょうか。正解です。しかもロボコップのルックスは洗練とはほど遠く、脚本もザ・ハリウッドな内容で、かなり残念なクオリティです。
しかし、もう少しピントを絞ると、無駄にスプラッターシーンが多い、なかなかスゴい人体破壊ムービーであることが分かります。主人公があそこまでコテンパンにやられるところを撮る必要はないし、病院に運ばれるシーンも傷口メインのアングルになっていて不自然。そして、極めつけはクライマックスでの悪党グループの死に様。くわしくは書きませんが、今まで見たことのないエグさとアホらしさがドッキングしています。
さらにピントを絞ると、監督のポール・バーホーベンが浮かび上がってきます。そう、この監督は『ロボコップ』の後に、『トータル・リコール』『氷の微笑』『ショーガール』『スターシップ・トゥルーパーズ』『インビジブル』といった、ハリウッド史上悪名高い、いや誉れ高い珍品を世に送り出した異才。要するに『ロボコップ』の無駄なスプラッターも、わざと。しかも、いかにもハリウッド的なヒーローものでこんなことをするからタチが悪い。ちなみに脚本を担当したエドワード・ニューマイヤーとマイケル・マイヤーは、『ロボコップ』の後もバーホーベンと組んでいるので、この人たちも確信犯です。
あたり障りのない映画ばかりの今日この頃、彼らのような毒を持った人が出て来きてほしいものです。
こんなふうに書くと何だか『ロボコップ』が深イ〜感じに思えるかもしれませんが、完全なおバカ映画です。

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2013年09月10日

『ダイ・ハード』な気分

130910.jpg「青天の霹靂」「寝耳に水」「寝起きにバズーカー」「AV鑑賞中に嫁さん」、思わぬ出来事は突然起こることは分かっているのに、大概は“まさか自分の身に降りかかることはない”と考えています。しかし起こり得るんです。誰の身にも、ドラマでしか見たことがないようなことが…。僕は今、そのことを身を以て感じています。今の気持ちを例えるなら、『ダイ・ハード』の主人公、マクレーン刑事しかありません。

巻き込まれ型アクション映画のさきがけであり最高傑作でもある本作は、公開から四半世紀経った今観てもおもしろいです。別居中の奥さんが務める会社(超高層ビル)のパーティーに渋々参加していたマクレーンが渋々テロに立ち向かうという受け身の設定が新しかったし、テロといっても単なる金目当てという「中身スッカラカン」な悪党像も、後のハリウッド映画や現実の動向を表していた。
このフレームを思いついた段階で「テラスハウス」の洋さんなら、 “なんか調子良くてさぁ…”と満足するところなんですが、この作品の脚本陣は容赦しません。この場所、この時だからこそ活きる細かい仕掛けと会話を積み重ね、荒唐無稽な話をよりドラマチックに、そしてリアルに仕上げています。
ご存知のように『ダイ・ハード』はシリーズ化されますが、後の作品は設定を焼き直し、スケールアップさせているだけでちっともおもしろくない。ビルやヘリコプターが爆発するからおもしろいなんてことではないはず。何が作品のおもしろさになっていたのか、そのエッセンスを見直してほしいものです。

「スケールアップ」って、昔からショボい話をデカく見せるハリボテになってましたね。「太陽に吠えろ」はスペシャル版になると決まって犯人が大物で、事件のスケールのデカさを打ち出すものの、いつもと違うことといったら、ボスが本庁に「途中で手は引かない」と電話することくらい。
これじぁ、スケールアップにすらなっていない…。

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2013年07月15日

『飛び出す 悪魔のいけにえ』

130715.jpg[ネタバレというほどではありませんが一応、ご注意]
3連休もガッツリ仕事。非現実的なスケジュールに、“きびしいッスねぇ”と精一杯の意思表示をしたところ、“いつやるのか? 今でしょ”と、今いちばん言うたらあかんフレーズで返され、さらにドンヨリした気分に。
リフレッシュするため、夜中にひとりで『飛び出す 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲』を観に出かけました。
タイトルの通り3D。別にパート3でもないのに3D。専用メガネをかけるのが面倒で、乱視が激しいせいか頭が痛くなる3D。しかも、微妙に値段が高い3D。まったくもって余計なサービスです。

仕事が一段落し、そろそろ映画館へ向かおうとしたその時、この日、自分がメガネをかけていたことに気づく。この場合、普段づかいのメガネの上にさらに3Dメガネをかけるのか? というか、かけられるのか? 
「メガネの方、3Dお断り」という文句を見たことがないので多分かけられるはずなんでしょうが、僕のメガネに限ってカタチの相性が悪く、三木のり平のようにズレまくる気がしたので、慌てて家に帰ってコンタクトに替える。真剣、3Dうっとうしい。
こんなに頑張ったのだから、レザーフェイスも張り切って僕の体を電ノコで切り刻んでくれるだろうと期待していたのですが、飛び出してこない! 2D版のチケットと買い間違えたのかと思うほど飛び出してこない! 何となく先っぽが浮き出ているように見えるだけで、これっぽっちものけ反るような迫力がない。こっちが飛び出して怒鳴りたい気持ちになってくるではありませんか。技術的な問題なのか、僕の問題なのか、はっきりしてほしい。

内容の方は、オリジナル版『悪魔のいけにえ』の正当な続編ということで、確かにストーリー的にはつながりはありますが、テイストはリメイク作の『テキサス・チェーンソー』に近いポップコーン・ホラー。しかも、不気味な雰囲気、惨劇描写のイタイイタイ度、ヒロインのエッチ度は、『テキサス・チェーンソー』よりも薄められています。はぁ、ジェシカ・ビールのバディ、よかったなぁ…。
そして、なんでそうなるの!という無理からな展開で、しかも途中から“レザーフェイス、頑張れ”みたいな感じでジェイソン化が強まり、怖くない。
でもまぁ、こういうツッコミどころがあるのもホラーの醍醐味のひとつだし、オリジナルへの思い入れをなくせば、そこそこ楽しめる作品です。気になった方は是非。
上映期間は3週間限定のため、“いつ観るのか?”
…やっぱり言うのやめときます。

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2013年06月04日

心に残る言葉

130604.jpg世の中は、心あたたまる言葉でいっぱいです。
しかし正直なところ、薄汚れ、ねじ曲がった僕の心では、「カリブーン」は耳についても、ハートウォーミングな言葉はスルー状態。稀に “ステキやん”と思っても、すぐにセクシーな妄想でかき消されてしまいます。
そんな僕にもひとつ、ずっと心に突き刺さっている言葉があります。

“怖いことを考えると、霊が寄ってくる”

誰がこんなことを言ったのでしょう。おかげで、今までどれだけ恐怖に震えたことか。真剣にどやしつけたい気持ちです。
40をこえた今でも時々この言葉が頭をよぎり、オロオロしてしまいます。しかもよりによって、つれ合いと子どもが帰省して、夜中に一人でイゴイゴしている時に思い出すんですよね。そうなると扉や窓の隙間、誰もいない暗い部屋に気配を感じて、背筋がゾワゾワ。そしてお決まりのようにオシッコがしたくなる。
仕方なく“お化けなんかいないさ〜”と、口ずさみながらトイレに行き、オシッコをしはじめると恐怖は一瞬薄らぐものの、勢いが弱まるにつれ後ろに誰かがいるような気がしてきて、まだ出し切っていない状態で僕のキュートなマイケルをしまい込んで退散し、ちょこっとパンツを湿らせてしまうのがいつものパターンです。

“霊なんか存在しない”、“いたとしても、いいヤツかも知れない”と考えたり、気をまぎらわせるために『Mr.Boo!アヒルの警備保障』を観ようとするのも怖いことを考えているからなワケで、結局 霊が寄ってくるという、ホントに恐ろしいチカラを持った言葉です。
今も、こんな文章を書いているせいで、この無間地獄に入りそうです。

こういう怖い時に頭に浮かぶのが、金田一耕助シリーズの『悪魔の手鞠歌』。まず、タイトルの響きが不気味だし、字ズラもおどろおどろしい。そして、とどめが作中に登場する、背中が曲がり、頭に手ぬぐいを被った老婆。霊ではなく生身の人間なんですが、僕の中では悪霊の象徴としてインプットされているんです。こんなふうに頭の中で膨らんだイメージは、どんな映像よりも破壊力があるので困ります。
さて、『悪魔の手鞠歌』は、市川崑の金田一シリーズの中でピカイチの出来映え。『犬神家の一族』と比べるとケレンミはありませんが、物語の完成度はこちらが上のように思います。
夏に待ちに待った廉価版のDVDが出るので、ゲットしなければ。でも、一人ではよう観れません。

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2013年03月31日

監督が熱い!

130331.jpg俳優、ジャンル、話題作など、映画を観るテーマは人それぞれあると思いますが、今年は監督を軸に楽しむのが熱いです。
今、公開されているクエンティン・タランティーノ〜『ジャンゴ 繋がれざる者』、ポール・トーマス・アンダーソン〜『ザ・マスター』、ミヒャイル・ハネケ〜『愛、アムール』といった強者の作品の後には、スピルバーグ渾身の新作『リンカーン』やレオス・カラックスの『ポーラX』以来の長編『ホーリー・モーターズ』なんかが控えています。久しぶりといえば、ベルナルド・ベルトルッチの『孤独な天使たち』も忘れるワケにはいきません。
さらにドン・デリーロの小説を奇才デヴィッド・クローネンバーグが手掛けた『コズモポリス』や、これまた奇才ハーモニー・コリンの『スプリング・プレイガール』もスタンバイ。
こうしてズラズラ名前を挙げているだけでワクワクしてきます。
全部をカバーするのはむずかしいですが、できる限り劇場に足を運びたいと思っています。(仕事帰りにコソッと行くレイトショーって、楽しいですよね)
最近では、キャサリン・ビグローの『ゼロ・ダーク・サーティ』、『ジャンゴ 繋がれざる者』、『ザ・マスター』を鑑賞。どれもなかなかの見応えで、特に『ジャンゴ〜』はおもしろかった。どことなくスベっているニオイがして、ビビリながら券売機に1200円を投入したのですが、タランティーノのバカさ加減が西部劇によくマッチしていて、いい意味で裏切ってくれました。プレデターの新作なんかを彼が撮ればおもしろくなる気がします。
『ザ・マスター』は、アル中男と新興宗教の教祖との愛憎関係をガッツリ描いているものの、どこかつかみどころのない不思議な作品。PTAはデビュー作の『ブギーナイツ』を観た時、ロバート・アルトマンの影響を漂わせながら、今のミシェル・ゴンドリーみたいにオシャレ路線に進むのかなと思っていたのですが、テレンス・マリックみたいな凄みが出てきましたね。

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2013年03月22日

男のロマン描く『髪結いの亭主』

130322.jpg最近、某メジャーリーガーの元妻がヒップだけではもの足りず愛車のポルシェまで見せびらかしたためにブーイングを食らっているようですね。哀しいことです。
批判している人は銭ゲバだの、品がないだの、いろいろ理由をくっつけていますが、要は嫉妬。どうして素直に“うらやましい”と言えないのか。僕なんか心の底から純度100%で“うらやましい!”と言い切れます。
だって、この世で考えられる最高のポジションじゃないですか、成功者の伴侶って。成功者本人は激務に追われ、いろいろなところからプレッシャーを受け、ハンパなく重い責任を背負っていることでしょう。それに比べ、パートナーの方は…。もちろん陰で支えるという大変な役目があるのは分かっています。が、しかし、やはり平日の朝からデパートの外商でショッピングをして、その後おいしいんだかまずいんだか分からないフレンチのランチを食べている光景が頭に浮かんでしまうんです。あぁ、うちのつれ合いも何か間違ってカリスマ主婦になってくれないものですかねぇ。

そんな他力本願男子の夢を描いた映画の最高峰として挙げられるのが『ビッグ・リボウスキ』と『髪結いの亭主』。『ビッグ・リボウスキ』は前にこのブログで取り上げたので、今回は『髪結いの亭主』をピックアップ。
話は、子どもの頃から髪結いの亭主になることを夢見ていた初老の男が、偶然立ち寄った理容店で運命の人と巡り会い、めくるめく日々を送るというもの。こういう話に出てくるチルアウトな男というのは、煩悩が乾いている「ほっこりキャラ」が多かったりするんですが、この男の場合はギンギン。いや、むしろ変態。しかも、すごい美人が嫌な顔ひとつせず、おかしな男のおかしな夢を実現させてくれるのですから、オッサンとしてはアベノミクスなんて比べものにならないくらい期待がふくらみます。しかし、マチルドという美女は一体、何を考えているのか? さっぱり見えてこない。もしかしたら実際には存在しない、男の妄想なのかもしれません。
監督のパトリス・ルコントは「出会いと別れ」という映画の王道テーマを描きつづけていて、単なるいい話ではなく、エロとセットにして描くところがいい。しかも彼のエロにはニオイがある。官能とは、石に下で蠢く虫みたいに湿ったところでグニョグニョしているもんです。
もちろんこの作品でも強烈な結末が用意されています。観賞後、きっと話が盛り上がると思いますので、カップル、ご夫婦で観るのがグッドです。

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2013年01月24日

価値観を揺さぶる『ヴァンビロス・レスポス』

130223.jpg“別に人に迷惑かけてないし”
開き直り、甘えきった言い分で、『戦メリ』の内田裕也のように“何を言っとるかぁ”と叱りつけたくなります。が、時にはそう言いたくなることがあるのも確か。
給料のほとんどをギャンブルにつかう、ご飯も食べずひたすらゲームをする、電車の中で化粧をする、クリームパンとあんパンを両手に持って交互に頬ばる、女装をして町内会に出席するなど、放っておいてほしいことは人によってさまざま。僕の場合は『ヴァンビロス・レスポス』という映画を観ることがそうです。

DVDのパッケージはオサレ風味で、カルト作品なんていわれたりしているようですが、騙されてはいけません。女ヴァンパイヤと欲求不満のキャリアウーマンが、いけない‘あんなこと’‘こんなこと’を延々しつづけるだけ。
すみません、一個人の印象だけでそんなことを言ってはいけませんね。
訂正します。凡人では理解不能な先鋭的カメラアングル、頭が真っ白になるアイロニーに満ちたイメージシーン、時間と場所の整理がつかないアバンギャルドな編集、脳みそがひきつるほどのサイケデリックサウンド、そしてカラダも心も萎えてさせてしまう美魔女の絡みが一体となり、“良い映画ってなに?”と、観る者の価値観を揺さぶってきます。人生のうちの90分を贅沢につかいたいと思う方はご覧になってもいいんじゃないでしょうか。

そんな問題作を、早送りボタンを押さないよう我慢して観ていたら、つれ合いに呆れられる。そこでズバッと“別に人に迷惑かけてないし”と言い返したいところなのですが、根が素直なので倍速にしてそそくさと終わらせて、NHKで放送していた「深海の超巨大イカ」にチャンネルを合わせたら、こっちの方がとんでもなかった。マジ、デカい。『海底五万マイル』や『ザ・ビースト 巨大イカの逆襲』って、リアリティ溢れる映画だったんですね。

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2012年11月12日

“えい”画『ラストエンペラー』

121112.jpgベルナルド・ベルトルッチの代表作のひとつ『ラストエンペラー』がブルーレイ化されたので即購入。人によって評価がパッカリ分かれる作品ですが、個人的には大名作だと思っています。何といっても映像が息を呑むほどキレイだし、ストーリーもドラマチック。そして、東洋が舞台なのに西洋映画のド真ん中というつくりで、歴史物でありながらすごくモダンという倒錯感が刺激的です。確かに“なんで中国人が英語で喋っとんねん!”という居心地の悪さはありますが、それは『キャプテン翼』に慣れ親しんだ者ならうっちゃれるはず。

細かな仕様にこだわるタイプではないので詳しくはないのですが、『ラストエンペラー』はいくつかのバージョン・画角があるらしく、これまでにDVD化されたもの(これもいくつか種類があるでしょうか?)は不評で、今回のブルーレイにはそんな熱烈なファンも一応は納得のバージョンが収録されているそうです。
VHS版しか持っていない吾輩としては華麗な映像をブルーレイの画質で観ることさえできればいいと思っていたのですが、いざ観てみるとちらつきが目立つシーンが結構あり、ブルーレイならではという満足感はなく、ちょい残念。
でも内容は、華のある栄画、鋭い感性みなぎる鋭画、詩的な美しさあふれる詠画、イメージの大海を駆け巡る泳画、そしてすごーく時間の長い永画と、映画のいろんな醍醐味を味わえます。

興味深かったのは特典映像に収録されているデヴィッド・バーンのインタビュー。この作品の音楽は坂本龍一とデヴィッド・バーン、スー・ツォンの3人が担当し、それぞれ別々に作曲するというイレギュラーな手法が採られました。使われ方としては主に教授の曲は時代のうねり、デヴィッド・バーンは主人公である溥儀の「個」の部分を担っていて、ベルトルッチがどのような依頼の仕方をしていたのかずっと知りたかったのですが、インタビューでシーンごとに割り振っていたことが分かりました。もしや、3人にすべてのパートを作曲させて、気に入ったものだけをチョイスするというキツい方法かもと思っていたので、ちょっとホッとしました。ただベルトルットがどんなイメージで割り振ったのかまでは分かりませんでしたが、この辺のところは分からないままにしておいた方がロマンチックですね。

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2012年09月01日

真夏のレイトショー鑑賞

120831.jpg今年の夏は、レイトショーで『ダークナイト〜ライジング』と『プロメテウス』を鑑賞。
楽しみにしていた『〜ライジング』は、不覚にも山場で居眠り。昔はわざわざお金払って映画館に来て、スースー寝息をたてているオッサンを見て“ありえへんッ!”と思っていましたが、やってみるとなかなか気持ちいいもんですね。
そういうワケで内容ははっきり分からないんですが、前作ほどの出来ではなかったように思います。まず前作のオープニングのようなガツンとくるシーンがない。(寝ている間にあったのかもしれませんが)また、今回はジョーカーのような強烈な敵役がおらず、シリーズ最終作ということもあって主人公のブルース・ウェインをどうクローズアップするかというところがキモになっていたのですが、ただの偏屈男にしか見えなかったのが残念。
もしかしたら『ゴッドファーザー2』でマイケル・コルレオーネが兄を殺して空っぽになったように、ブルース・ウェインもレイチェルを失い、デント検事が悪に墜ちたところで終わった人になったのかもしれません。
期待度が高かったのでどうしても辛めの感想になってしまいますが、偏差値は高いです。シリーズを通して素晴らしい仕事をした監督のクリストファー・ノーランはもちろんのこと、カメラのウォーリー・フィスター、そして音楽のハンス・ジマーにも拍手をおくりたい。(自分で書いておいてなんですが、一体、何様目線なんでしょうか)

『プロメテウス』は『〜ライジング』とは反対に何の期待もせずに行った分、楽しめました。ストーリーは適当で、ヒロインをはじめとする調査隊の連中も“何でこんな人たちが重要な調査に来たの?”と思ってしまうバカばっかりで、B級ノリを加速させる効果を生んでいます。
そんな感じですから、宣伝でやたら連呼している「人類の起源」については“はぁ…”という程度。反対にこの映画で人類の起源が解明されればビックリですが。
それと、シャーリーズ・セロンの扱い、ひどくないか? ピークを過ぎた女優が辿るパターンに自ら進んでいるようで、もったいない気がいます。まぁ、セクシーなボディスーツ姿が見られたからいいですけど。『〜ライジング』でもアン・ハサウェイがボンテージ風のボディスーツ姿を披露してくれるのですが、前にジッパーがあるのがいただけません。
朝、目が覚めたらセロン嬢のようなボディスーツ美女が立っていて、“いつまで寝てるのよ、このボンクラ!”と罵られることを夢見ているのですが、いつも居るのは平和な寝顔を浮かべたつれ合いです。

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2012年07月19日

3本の傷を持つ男

120719.jpg朝、着替えをしようとTシャツを脱いだら、『燃えよドラゴン』のブルース・リーのように、お腹に赤い傷が3本ついていました。“寝ている間に引っ掻いたのかなぁ”と考えていると、つれ合いと目が合ったので“ブルース・リーみたいでカッコ良くない?”と訊いたところ、“ス・テ・キ!”とホレ直されるということはまったくなく、“どこで遊んできたんやろか…”と、冷たい視線を浴びてしまいました。確かに、女王様に弄ばれたいかそうでないかと尋ねられたら、積極的にいたぶってほしいタイプですが、残念ながら100%男子で飲んでいただけです。

ところで今の若い男子にとってブルース・リーはどんな存在なんでしょう?
昔はアジア人の小さい男が超人的なワザで大男を秒殺する姿にしびれたものですけど、もしかしたら変な叫び声を上げる暑苦しいオッサンくらいに思われてるんじゃないでしょうね…。
某テーマパークに来ていた修学旅行生がEとTのつく宇宙人を見て、“なに〜?!このキモイ、キャラ!”と叫んでいたという話を聞いたことがあるだけに十分あり得えます。

世界を仰天させた彼の代表作『燃えよドラゴン』は、今観てもインパクト、スゴ過ぎです。オープニングの黒パンツ姿からして強烈。その後繰り出されるアクションについては改めていうまでもないでしょう。実はこの作品の撮影時、すでに病魔が忍び寄っていて、顔はゲッソリ、カラダもかなり痩せているのですが、それが逆にただ者ではないオーラをより強烈にしています。それは“初めてのハリウッド映画を何としても成功させるんだ”という気迫でもあったのでしょう。

さて、ブルース・リーが使う武器といえばヌンチャク。この作品でもシーンとしては少ないものの強烈な存在感を示しています。カズダンスと同じように動きは派手でも意味なしという気がしないでもありませんが、彼が振り回すとマシンガンを持っていてもやられそうに思えてしまうから不思議です。
それにしてもヌンチャクってあんなにカッコいいのに、どうしてブレイクしないんでしょうか? スケボーなんてスポーツの枠をはみ出してカルチャーになっているし、フリスビーだってカッコ良さげになってるじゃありませんか。
どこかのブランドがいい感じにアレンジして広まり、ヌンチャクカルチャーができれば、きっとブルース・リーも喜ぶでしょう。
7月20日は彼の命日です。

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2012年05月15日

ギャスパー・ノエが描く都市

120515.jpg天国と地獄。それは一見、両極端なものに見えますが、案外表裏一体なのかもしれません。『そうべい ごくらくへゆく』(田島征彦)という絵本では、地獄にいる閻魔さまや鬼たちが天国にやって来て、神さまと一緒にお酒を飲んで踊り狂い、天国がレイヴ状態になると同時に地獄に蓮の花が咲いてしまいます。
ダンゴムシにとっては南国のビーチよりジメッとした石の下の方が天国に感じるでしょうし、美人料理研究家の園山真希絵さんが作った料理をご馳走に感じる人もいるのです。(この人の手作り料理、しょうこ画伯の絵レベルにスゴいことになってます)吾輩だって天国といって思い浮かべるのは、押入れにお菓子やマンガやゲームを持ち込んで、懐中電灯の明かりで楽しむさまだったりします。つまり天国も地獄も人のイメージで決まるということ。
そういう意味では、ギャスパー・ノエの目下最新作『エンター・ザ・ボイド』も、トーキョーをモチーフにして天国と地獄を描いた作品といえるでしょう。時間が逆行するという前作『アレックス』の焼き直し的な構成は置いておくとして、どこにも存在しない架空のトーキョーのビジュアルはなかなかのインパクト。『ブレードランナー』や『殻機動隊』、ウィリアム・ギブソンが描く都市空間の影響がモロに出ていますが、そこに『ベルリン 天使の詩』の天使(神)の視点が加わった途端、今まで見たことのないトーキョーが現れます。
それが天国なのか、地獄なのかは、観る人によって異なるはず。

新しい都市像というと、カナダの写真家、エドワード・バーティンスキーが『CHINA』で捉えた空間には、ひさびさにハッとさせられました。機会があれば、こちらもチェックしてみてください。

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2012年02月29日

フィンチャーの法則〜『ドラゴン・タトゥーの女』

120229.jpgいくつか並んでいる数字を見て、その法則を見つけるという脳トレの問題にトライしたところ予想以上にできなくて、落ち込むのを通り越して心配になるという事態に。小学生の時にも学校で同じようなテストがあったのですが、まったくできませんでした。こういうテストって数学の問題が解けないのとは違って、もともとのポテンシャルが低いような気にさせますよね。この時ばかりはオカンがよく言っていた“あんたはやったらできる子や”というフレーズを頭の中でリフレインさせました。

そんな吾輩でも、数字の法則は分からなくても「フィンチャーの法則」は分かります。「フィンチャーの法則」とは、映画監督であるデヴィッド・フィンチャーの作品はデビュー作から数えて偶数の作品がおもしろいというジンクスです。ちなみにデビュー作から順に挙げると、『エイリアン3』『セブン』『ゲーム』『ファイト・クラブ』『パニック・ルーム』『ゾディアック』『ベンジャミン・バトン数奇な人生』『ソーシャル・ネットワーク』、そして最新作の『ドラゴン・タトゥーの女』。奇数の作品の中にも好きなものはありますが、やはりどこかお仕事モードな感じが漂っています。
今話題の『ドラゴン・タトゥーの女』も法則の範囲内というのが正直な感想。原作に拠るところも大きいんでしょうけど、まずミステリーとしての筋立てにいまいち奥行きがない。それに登場人物の顔を見ただけで犯人が分かってしまう土曜ワイド劇場チックなキャスティングもいかがなものでしょう。(いつも気合いが入っているオープニングも今回は上滑り気味)主役の一人、リスベットのエキセントリックな人物像が魅力的だっただけに惜しい。
それでもフィンチャーの語り部としてのスキルは高く、舞台がいろんなところに移り、金田一耕助作品のようにややこしい名前の容疑者がいっぱい出てくるのにスムーズに進んでいくさまは、ノツコツしていた『エイリアン3』とは大違い。この人、『ゾディアック』から物語を語る監督に変わった気がします。凡打がなくなりアベレージは高くなるかもしれませんが、やっぱりフィンチャーには『セブン』や『ファイト・クラブ』のようなランニングホームランを狙ってほしい。個人的にはオリバー・ストーン版ではなく、フィンチャー版の『ウォール街』の続編が観たかったなぁ。

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2012年01月19日

目覚めよ、漢!

120119.jpg去年の暮れあたりから元気がありません。普通ならどんなに調子が悪くても2〜3日周期でお腹の下から突き上げてくる衝動があるのですが、最近はナマズのヒゲがピクリと動く程度。そんな自分を受け入れることができず、一人精を出しています。
「奮い立て、オレの中の大和魂よ!」と自分に喝を入れるために観たのが、大橋未久チャンではなく『スーパーフライ』。この映画はドラッグディーラーが自由を求めてハーレム脱出を企てるというブラックムービーの代表作なんですが、完成度はさておき、とにかく主人公のプリーストがイカすんです!
登場シーンからいきりスッポンポンで美女(実際は微妙)を“抱いて”いるのですからたまりません。どうでもいいことかもしれませんが、この時のプリーストの股の広げようと局部隠しのシーツは絶妙です。
中盤にもお風呂でガールフレンドを“抱く”シーンがあるのですが、これが胸焼けするくらい濃厚。黒光りするすべすべお肌、ボリューム満点のヒップ、チロチロ動く舌…あんまり書くとまたまた女性読者が減るのでやめておきますが、途中からエロというより、きれいな馬の交尾を見ている気分になってきます。
エロの他にこの作品の大きな魅力になっているのがファッションや車などのアイテム。錦ゴイのようなコートを着こなし、無駄にデカいキャデラックを乗り回すプリーストのカッコいいこと! これぞ、漢(おとこ)です!
でも、プリーストと銭湯で出くわしたら絶対に心もカラダも萎縮するのは間違いありません。そう思うと元気のない吾輩の小姓が可愛く思えてきました。

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2011年10月13日

レイア姫を見たら考えざるを得ない美の基準

111013.jpg海外の女性アーティストに対する‘歌姫’というフレーズに違和感をおぼえたことはありませんか?
悪気はなくても ‘あか抜けない田舎のお姉チャンじゃね?’とか、‘クラスで煙たがられている気の強いオンナっぽい’といったイメージが頭をよぎった人は多いはず。
しかしこれは、強引な売り文句をこじつけたのでなく、美人の基準が日本と西洋ではちがう可能生も考えられます。
最近ブルーレイでBOXセットが発売された『スターウォーズ』のレイア姫を見ると、その思いはさらに強くなります。日本人の感覚に従えば、まずないキャスティング。みうらじゅんさんも『ブルータス』の対談でいってましたが、あのレイア姫をソロとルークが取合うことに、今も昔も醒めてしまいます。
でも、よくよく考えると、『スパイダーマン』や新『バットマン』シリーズなど、ハリウッドのヒット作のヒロインって、みんな同じ感じなんですよね。
やっぱり感性の違いなのか? 吾輩はもう一歩踏み込んで考えました。意図的に‘これはアカンやろ’というキャスティングにして、観客に違和感というかほとんど反感に近い感情を持たせることが、ヒット作を生むハリウッドのギミックではないのかと。しかもそれは、ノーパンしゃぶしゃぶやノーパン牛丼、ランジェリーたこ焼きといった、日本が誇る文化を参考にしているのではないかと。
そういったお店に行った人の感想を聞くと、その多くが‘食欲と性欲を同時に満たすのはムリ!’というものです。吾輩は一度も行ったことがないので実体験として伝えることができないのですが、いわれてみると説得力のある意見です。いや、行ったことはありませんが、そうに違いありません!
この心理を映画と音楽に当てはめると、こわいほどスッポリとハマるではありませんか。とびっきりの美人をヒロインにすれば、肝心の主人公やストーリーがかすんでしまう。絶世の美人が熱唱すればメロディなんてそっちのけで見とれてしまう。二兎追う者は一兎も得ず。おいしい要素てんこ盛りに見えるハリウッドもメジャーレーベルも、実はギリギリのところで勝負をしているのです。ホントの美人はストーリーや音楽性なんてどうでもいい、C級作品で堪能するのが正しいのかもしれません。
それにしても、レイア姫にあのキャスティングはないわ。

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