KITSCH PAPER

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2017.04.06

おやじに夢中

170406朝鮮系のおやじにハマっています。
ひとつは、ナ・ホンジンがメガフォンをとった、とんでもムービー『コクソン』に登場する二人のおやじ。一人は主人公で、猟奇殺人事件の謎に迫る田舎まちの警官。このおやじ、かなりダメな人で、職場でも家でもまったく“うだつ”が上がらない。事件の真相に迫るといっても、実際のところはビビって逃げまくっていたものの、のっぴきならない状況になって巻き込まれていくだけ。ダメおやじ系の作品に目がない僕はこれだけでも満足なんですが、この作品にはさらに國村隼が出ているんです。しかも「ウホォ!」と声が出る、ふんどし姿で。この二人を中心にアウトなおやじ共が繰り広げる珍事がサイコーです。
ネタバレするので詳しくは書きませんが、この映画、最初は宣伝で紹介しているようなサイコもののつもりで観ていたら、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』を遥かに凌ぐ、思てたんとちがう展開に。そういえばナ・ホンジンの前作『悲しき獣』も、冴えない男の一発逆転劇だったはずが、気がついたら別のおやじが牛骨を振り回す話になってましたね。スムーズな話の流れなど完全に無視したこのパワー。ナ・ホンジンは、今観るべき監督の一人に確定です。

もうひとつのおや汁作品は、『マッド・ドッグ』(菊山尚泰)という小説。朝鮮の貧しい村で育った男が日本に出稼ぎにきて、戦後の裏社会でのしあがっていくサーガで、これが無類におもしろい! とにかく主人公が、人を殴る、殴る、殴り倒す。圧倒的な暴力で富と力を手に入れていくプロセスだけでなく、執拗な暴力描写(『その男、凶暴につき』のビンタ乱れ打ちに似た不快感)もこの小説を特別なものにしているといえるでしょう。
作者である菊山氏の父親がモデルになっているらしく、菊山氏自身も殺人を犯し、無期懲役囚として服役中。塀の中で獄中記や自らの体験をもとにした小説を書いているとのこと。恥ずかしながら、この本を読むまで知りませんでした。頻繁に出てくる暴力描写は表現の引き出しが少ないせいでパターン化してしまっているのですが、これがアニメのセル画の使い回しやリミテッドアニメーションのようで、劇画チックな味わいを醸し出しています。
前半は主人公のサクセスストーリー、後半は息子との親子愛に重点が移る構成になっていて、特に後半は主人公が一本気な男として描かれ、いい話風になるのですが、何度も「いやいやいや、あかん人でしょ!」と、我に返ることになります。家族や親戚、スナックで居合わせた一般客などを容赦なく殴る人間って、他にいい面があったとしてもダメでしょ。現におやじの影響をもろに受けた息子(作者)も一線を越えてしまうわけですから。それでも思い出ではなく、現在進行形で「俺のおやじ最高」といえる親子関係って凄い。
このように物語後半は、作者がいい話風味のネタふりをして、読者がツッコミを入れる関係になって楽しいです。
いやぁ、むさ苦しく、匂い立つおやじ、たまりません!
ダメおやじを特集した『KITSCH PAPER vol.4』をつくりたいけれど、時間がないんですよね……。

posted by ichio