KITSCH PAPER

HOME BOOK DAIRY MOVIE MUSIC ETC
Oh my Buddha!It is such a wonderful site that it's unbelievable.
2020.06.15

今の世の中にはベルガーが足りない

Ayrton Senna and Gerhard Berger 少しずつ社会が動きだした今日この頃。スポーツ界も未確定要素はありながらも、始動しはじめています。
 F1は、3月に開幕戦のオーストラリアGPをドタキャン。その後すべてのチームのファクトリーが閉鎖され、ほぼ活動停止状態に。
 しかし、多目的トイレで「その目的は考えてなかったわ」という、トリッキーな活用法を実践した芸人さんが袋叩きの目に遭っている間に、7月5日のオーストリアGPから開幕することが決定しました(残念ながら今年の日本GPは中止となってしまいましたが)。
 まだまだ状況によってはどうなるかわかりませんが、ひとまずシーズンがはじまるのはファンとしては嬉しい限り。尽力されている方々に「ありがとう」です。

 ところでここ最近、先の多目的トイレ芸人さんをはじめ、芸能人のスクープ&集中砲火が止まりません。
 ほとんどが当人同士の問題で、関係のない他人にはどうでもいいことのように思うのですが、一部の人は騒ぎ立てないと気が済まない様子。昔なんて、パンツに大麻を隠すという、とびっきり多目的にパンツを活用した役者がいたくらいなのに。まぁ、これは当時でも大騒ぎになりましたけど・・・・。
 「時代が変わった」「だってダメなことでしょ」「芸能人なんて人気商売」と言われたら「その通りでございます」という他ないのですが、窮屈すぎる気がしやしませんか。もうちょっとユルい世の中の方が生きやすく、楽しいように思うのですが。

 こうした世の中の流れの影響か、F1ドライバーも今と昔では随分さま変わりしました。
 昔はアウトロー的な人が多かったのに比べ、今は良くいえばスマートになった、率直にいうとビジネスマン化された。みんなチームやスポンサーに気をつかって、無茶なふるまいはしない。6度ワールドチャンピオンに輝き、見た目もライフスタイルも派手なハミルトンでさえ、キャラとしては薄い。だから、どんなに凄い走りをしても、それ以上にグッとくるものがないというか、感情移入できないんですよね。

 このようにお利口さんが多くなり、「今のF1にはベルガーが必要だ」と、しみじみ思います。
 F1に馴染みのない方に少しだけ紹介すると、ゲルハルト・ベルガーは80年代半から90年代にかけて、フェラーリやマクラーレンなどの名門チームで活躍したトップドライバー。しかしセナやプロストという超天才が全盛期をむかえていたこともあり、残念ながらタイトルを獲ることはできませんでした。が、記録ではセナプロには遠く及ばないものの、記憶の面ではまったく引けを取らず、今でも多くのファンに愛される存在。僕も30年F1を観つづけてきたなかで、トップ3に入るくらい好きなドライバーでした。
 彼の魅力は、高速コーナーが滅法速い豪快なドライビングもさることながら、個性的なキャラクターが大半を占めていたといっても間違いはないでしょう。
 とにかくお茶目で破天荒。スタッフや関係者へのいたずらは日常茶飯事。そればかりか、厳格な性格で知られるマクラーレンのドンであるロン・デニスをワニ園の池に突き落としたり、フェラーリのチーム代表だったジャン・トッド、チームメイトのジャン・アレジと車で移動中、いきなりサイドブレーキを引いて車を横転させたりするなどのヤンチャぶり。気難しくて、あまり人を寄せつけないセナにも容赦なし。セナのアタッシュケースをこっそり持ちだし、ヘリで上空から投げ捨てたというエピソードは有名。無茶苦茶を通り過ぎて、「ちょっと頭おかしいんじゃないの?」というレベルです。
 また彼は色気のあるハンサムで、女性にモテモテ。ベルガー自身も女性が嫌いではなく、今なら一部の人から集中砲火を受けるようなことをしていたとしても、何ら不思議ではありません。
 ドライビングに関してはハマると手がつけられないほど速いものの、波があってシーズン通して続かない。そして、まわりが呆然とするような考えられないミスをしでかすこともしばしば。けれど、「ここで勝ったらカッコ良すぎるやろ」というシチュエーションで勝ってしまう。このギャップがたまらん!のです。
 そして情に厚く、おまけに頭脳明晰。だから、多くの人に好かれ、今ではモータスポーツ界で重要なポジションに就いているのも、これまた何ら不思議ではありません。

 今、ベルガーのようなドライバーがいたら、やっぱり叩かれまくりなんでしょうか。違ったタイプでもいいので、クセの強いドライバーが増えて、サーキットを華やかにしてほしいものです。
 それはエンターテインメントの世界も同じ。こじんまりまとまらず、ダイナミックで、華やかであってほしい。そのためには、観る側もちょっとくらいのことなら笑ってスルーする余裕があっていいんじゃないでしょうか。

posted by ichio