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2021.08.16

御陣乗太鼓

210816 YouTubeの画面の横っちょに表示される“暇してるあんたへのオススメ動画”に、日々まんまと釣られています。ほとんどはこれまだ見た動画と関連したものがピックアップされますが、時々「何でこんなんすすめてくるの?」という代物にお目にかかることがあります。
 今回取り上げる御陣乗太鼓もそのひとつ。何気に見たところ、これがとんでもなくイカしていて、関連動画を見てまわるように。おかげで僕のYouTube画面の右横は、御陣乗太鼓だらけになっています。

 オフィシャルサイトによると、御陣乗太鼓の由来は約450年前に遡るとのこと。天下統一を目指す上杉謙信が能登に攻め入り、その軍勢は名舟村という小さな村落にも押し寄せてきました。迎え討つといっても名舟村の村人たちは武器らしい武器を持っておらず、映画『300』以上に勝ち目のない状態。そこでやけくそ気味に、樹の皮と海藻でつくったお面を被って太鼓を打ち鳴らしながら夜襲をかけたところ、上杉軍は驚き、慌てふためき、戦わずして退散したそうです。
 確かに僕もこんな集団に出くわしたらビビリますが(大人になってからお化け屋敷で腰を抜かしそうになった経験あり)、それにしても上杉軍、浮足立ち過ぎでしょ。天下統一できなかったのも納得です。
 一方村人たちはこの出来事を奥津姫神の御神徳によるものとし、毎年、奥津姫神の大祭で太鼓を打って氏神に感謝を捧げるようになったといいます。

 パフォーマンスは、夜叉や幽霊、達磨、爺などが入れ代わり立ち代わり、ひとつの太鼓を打ち鳴らすのが基本スタイル。伝統的な和太鼓というと敷居が高いイメージがありますが、御陣乗太鼓はある意味すごくポップで、すんなり入ってきます。特にロックリスナーは好きなんじゃないでしょうか。
 まず、グラムロックのようにビジュアルにケレン味があり、いきなり心を鷲掴みにされます。そしてサウンドは、ベース部分を担当する打ち手がポリリズム的なリズムを刻み、その上に他の打ち手がさまざまなフレーズをブチ込んでいきます。打ち手によって多少テイストは異なるものの、すべてパワープレイ。それを大人数編成ではなく、マックス5、6人の少人数で演奏するところもロック的。
 また、太鼓の演奏中によくある「セイヤッ!」という勇ましい合いの手ではなく、「ぐわぁ〜」という雄叫びや、「ぐへぇ〜ぐへぇ〜」という唸り声をあげるところも、異形感があってカッコいい。
 個人的には、ノイバウテンの『Kollaps』や、ナイン・インチ・ネイルズ『Fixed』に通じるトンデモ感をおぼえました。

 御陣乗太鼓は石川県指定無形文化財、輪島市指定無形文化財に指定されており、保存会の方々も精力的に活動されているようですが、保護育成の助成がほとんどなく、活動は縮小傾向にあるとのこと。自治体だけの支援となるときびしいと思うので、何とか国がこういう伝統芸能の保存に取り組んでほしいと思うのですが、むずかしいのでしょうか。日本文化の素晴らしさを謳った・・・・のに、パフォーマーの方々は誰一人得しなかった、“あの”オリンピック開閉会式に驚愕の予算を投入できるのですから、どうぞよろしくお願いいたします。

posted by ichio