KITSCH PAPER

HOME BOOK DAIRY MOVIE MUSIC ETC
Oh my Buddha!It is such a wonderful site that it's unbelievable.
2014.02.06

『Uncommon Places』

120205.jpg日曜日、子どもとつれ合いは習いごとのイベントに出るため朝から外出。
伽藍とした家の中でしばし、ぼんやり。なぜか、自分の家ではなく似たような場所に迷い込んだ気分になる。ゆっくりと流れる、静かな時間。こういう休日も悪くない。ミルでお気に入りの豆を挽き、ちびりちびりとコーヒーを飲みながらスティーブン・ショアの写真集をめくる。

なんか安いラジオCMみたいになってしまいました。ミルで豆を挽いたというのはウソで、お気に入りのコーヒー豆なんてのもなく、せいぜいコクのある豆を選ぶ程度です。ただ、スティーブン・ショアの『Uncommon Places』を眺めていると、いつもの生活リズムとは違う不思議な感覚になるのはホントです。
『Uncommon Places』は、彼が70年代にアメリカ各地を旅してまわって撮った写真が納められた作品集。ダイナーやショッピングセンターのガレージ、閑散とした町、そこで暮らす人たちなど、ほとんどがロードムービー系の「あるあるショット」なんですが、他の似たような写真とは違う“何か”が写し出されています。
旅の中で気の向くままに撮っているイメージとは裏腹に構図はビシッときまっていて、テイストもシャープ。ロードムービー系の元祖、ロバート・フランクがリアルで動的な写真なのに対して、ショアの写真は静的でどこか幻想的。そのギャップが被写体との距離感をつくり、ノスタルジックな雰囲気を生んでいるのかもしれません。

写真のことは疎いのでよく分かりませんが、近頃の音楽や小説、映画なんかは「今いる場所」を描いたものがやたら多く、「どこかへ連れて行ってくれる」ものが少ないように感じます。
「今いる場所」を描くとどうしてもリアルな目的と結びやすく、受け手の意識も直線的になりがちです。たまにこういうものにふれると気分が上がりますが、そんなんばっかりだと洗脳されているみたいで気持ち悪くなってきます。
一方で「今いる場所」系があり、もう一方で目的やゴールにしばられず、イメージや思考を彷徨わせるような作品があってもいいんじゃないでしょうか。
ただし、それはグラビアではいりません。たまにアートっぽい感じになってるのがありますが、まったく余計なお世話。こちらには確固たる目的があるのですから。

posted by ichio