サイコパスのアイドル登場!
久々に心ときめくアイドルが登場しました!
キャラ的にはアイドルに詳しそうな感じがするかもしれませんが、生まれてこのかた、アイドルはもちろんのこと、女性タレントさんのファンになってことはありません。熟女AV女優さんは例外としますが・・・・。
僕が心ときめかせているのは矢部寿惠・・・・ではなく、映画『クリーピー 偽りの隣人』に登場するサイコパス、西野さんです。いやぁ、あの素っ頓狂な物腰といい、堂に入った壊れっぷりといい、敬意を表して“さん”づけで呼びたい。僕としては、『冷たい熱帯魚』の村田レベルの逸材。
どこが素晴しいのかというと、一見普通の人のような感じがするものの(変わってはいますが)、人間としての根っこの部分が間違いなく、そして完璧に壊れていることが、ズシ〜ンと伝わってくるところ。これは第一級のサイコパスになるための必須事項といえます。はなっからおかしい人は、ただの狂人。別のカテゴリーです。普段は常識人、あるいは普通の人よりも優れた能力をもつ人でありながら、ある時に突然異常な面が現われるから怖いんです。
それと、犯行の動機が謎であることも重要なポイント。サイコ業界のスーパースター、ハンニバル・レクター博士がこのお手本です。しかしレクター博士も最初はこのルールに則っていたのに、作品を重ねるごとに理由を説明しだしてすっかり底の浅い殺人鬼に落ちぶれてしまいました。村田先輩はサイコパスでありながら、お金という俗にまみれた要素が絡んでいるところに新しさがあったのですが、話が進むにつれて何が目的で人を殺しているのかが曖昧になっていくので、やはりサイコパスの基本をおさえているといえるでしょう。
西野さんも、この系譜。しかも彼の場合は、チグハグな受け答えと、香川照之の興醒めするギリギリのオーバーアクトによって、笑いの要素もプラスされているサービスぶり。「えぇぇぇ〜! 犬、しつけるんですか?! ……いいと思いますよ、そういうの」、「まだまだいくぞ〜、マックスぅ〜」は、爆笑モノです。
※ここからは少しネタバレ的なことがあるのでご注意ください。
話は同名の原作小説に基づいていながら、黒沢清監督の集大成で、傑作『CURE』のポップ版といえる内容に仕上がっています。ストーリー自体はありがちといえばありがちなんですが、作品を覆う世界観が素晴しい。舞台はどこにでもある、ちょっと町はずれの古い住宅街なんですが、ひと目見た瞬間にゾゾッとする気味悪さを発しているんです。これを見ると、仕事の帰り道にある、ひと気のない家も、同じような惨劇が起こっているんじゃないかと思えてしまう。
前半は、この不気味さが充満していて傑作の気配。残念ながら、中盤に物語が動き出してからは西野さんが凡庸な殺人鬼に見えてしまうところがあり、失速。最後の方は、主役夫婦や西野さんの顛末よりも、飼い犬のマックスがどうなるのかの方が気になった人は少なくないはず。それに自宅(?)奥にある監禁部屋はリアリティがなくて醒めてしまう。6年前の失踪事件現場と同じようなところで犯行が繰り広げられたら、もっと怖かったように思います。
まぁそんなことは置いといて、サイコ好きは一見の価値アリです。