KITSCH PAPER

HOME BOOK DAIRY MOVIE MUSIC ETC
Oh my Buddha!It is such a wonderful site that it's unbelievable.
2016.08.04

リドリー・スコットの勢いがハンパない

160804ここ数年、映画界でおじいちゃん監督のパワーが止まりません。去年は、ジョージ・ミラー(71歳)の世紀の傑作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が上映され、映画ファンはお祭り騒ぎに。ジョージ爺は現在、続編の『マッドマックス ザ・ウエイストランド』の製作に取りかかっている模様。70を過ぎて、あんなブッ飛んだ映画をつくり上げる感性とパワーにただただ脱帽です。
そんなおじいちゃん監督界で先頭を走るのは、クリント・イーストウッド(86歳)とリドリー・スコット(78歳)のお二人。一般社会でこのお歳であれば、現役は退き、名誉会長と会長などにおさまっている感じですが、お二人は今もバリバリの現役プレイヤー。

で、今回はリドリー・スコットをクローズアップ。イギリス人のリドリー爺は、テレビディレクターとしてキャリアをスタートさせ、のちにCMディレクターに転身。そして1977年に『デュエリスト 決闘者』で映画監督デビュー。ちなみに、トム・クルーズの出世作『トップガン』を撮ったトニー・スコットのお兄さん。
デビュー作の後『エイリアン』『ブレードランナー』と立て続けにSFの傑作をつくりあげ、瞬く間に時代を担う気鋭監督に。特に『エイリアン』のゴスメタリックな宇宙船内や『ブレードランナー』のテクノオリエンタルな都市などの空間デザイン、逆光やスモークの効果を活かしたグラフィカルな映像が脚光を浴びたワケですが、皮肉にもこの特長がその後のスランプを招く要因に。『レジェンド 光と栄光の伝説』『1492 コロンブス』では、お得意の映像美を前面に打ち出すものの、まったくお話に中身がないため、薄っぺらな紙芝居を見せられている感じに。比較的マシといわれている『ブラック・レイン』や『テルマ&ルイーズ』にしても、「別にあなたがメガフォンをとらなくても良かったんじゃないの」と感じる出来映え。ゴージャスな映像だけで中身がないという彼の作風(?)は、50年代の“豊かなアメリカ”を再現しようと、ハリボテの豊かさをつくっていた80年代のアメリカを象徴しているようで興味深いところ。意地悪な見方をすると、イギリス人のリドリー爺が自分のキャリアを呈して、そのことを皮肉ったともいえます。(言っときますが、僕はリドリー・スコットのファンです)
当然、世間的な評価も“映像派監督”から“それっぽいイメージだけの監督”へと降格。さらに、もう失敗は許されないという四面楚歌な状況でつくったのが『G.I.ジェーン』。この映画、主演のデミ・ムーアの丸坊主姿同様、まったく魅力のない愚作です。まだ『エイリアン3』のシガニー・ウィーバーの丸坊主の方が、エロさはあったような気がします。正直『G.I.ジェーン』を観た時は、僕も「この人、もうダメだな」と思いました。(しつこいようですが、僕はリドリー・スコットのファンです)

そんな落ち目街道まっしぐらのリドリー爺の起死回生の一発となったのが、『グラディエーター』。この作品では、持ち前の映像美とローマ帝国というケレン味のある舞台設定がマッチ。さらに復讐劇という推進力のあるストーリー性が加わり大ヒット。見事アカデミー賞まで獲得しちゃいます。
この成功を機に、こだわりの映像作家から職業監督に鞍替え。それからは憑き物がとれたようにアベレージの高い作品をつくり続けています。近年も『悪の法則』や『オデッセイ』などの力作を発表。現在は『エイリアン』の序章であり『プロメテウス』の続編にあたる『エイリアン コヴナント』を制作中。そして何と、製作総指揮として禁断の『ブレードランナー』の続編に着手。このバイタリティとキレの鋭さに恐れ入ります。しかも監督にドゥニ・ヴィルヌーブを起用するところが分かってらっしゃる!

このようにさまざまなジャンルの作品を撮っているリドリー爺ですが、ほぼすべての作品に共通するテーマがあります。それは、“予期せぬ死に直面した時、人はどうするのか?”ということ。
デビュー作の『デュエリスト』はタイトル通り、命をかけて闘う男の話。『エイリアン』は絶望的な状況の中でサバイブする話だし、『ブレードランナー』は数年の寿命しかないことを知ったアンドロイドの苦悩を描いた話です。新しい『悪の法則』や『オデッセイ』も構造は同じ。
なので、彼の作品を観ると、自分に予期せぬ死が迫った時どうするのかを考えずにはいられません。そしていろいろ考えた結果、“逃げる”という答えに至りました。しかも前向きに考えた結果の“逃げる”ではなく、単なる逃避。パニック映画でよく出てくる、仲間が戦っている間にコソッと一人で逃げるセコいヤツ、あれです。まぁ、そういうヤツに限ってろくな死に方はしないんですけどね。
ということで、リドリー・スコットにはこれからも素晴しい映画をつくりつづけてほしいものです。
それにしても彼の顔、もはやブロンズ像みたいになっている。カッコいいです。

posted by ichio