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2017.01.31

地獄を描く師弟のつながり

170131日々仕事をする中で、「今があるのは尊敬できる上司のおかげ」とか、「師匠といえる人に出会い、たくさんのことを教わった」という話をよく聞きますが、僕の場合は勤めていた会社がフラットな感じのところだったこともあり……いや、可愛げのない性格のせいで、そういった関係を築くことなく、ここまできました。若い時に面倒くさい話を聞かなくてよかった代わりに、今、面倒くさい話を聞いてもらうことができません。また、飲みに行った時に“それ風”な話をしようとしても実のある話ができないため、自分のコアな部分の上澄みを話すと、こちらの意図と違う受け取り方をされてドン引きされ、こっちも微妙な気持ちになることがあります。こういう“こじらせ”を起こさないためにも、若いうちに師弟関係はつくっておくべきといえるでしょう。

映画の世界においても数々の師弟関係があります。その中でも近年、お互い刺激し合い、それぞれの作品に反映しているのが、ジョージミラーとメル・ギブソン。二人はながい映画史の中で燦然と輝く初回マッドマックス・シリーズで監督と主演を張った間柄。彼らはシリーズ3作を作り上げた後は直接的に関わることはありませんが、今でもスピリッツだけでなく、作品のつくりまでも影響し合っています。

※ここからは多少のネタバレがあるのでご注意ください。
はじまりは『マッドマックス2』。この作品のストーリーは、砂漠のギャング団から石油と村人を守るために主人公マックスがおとりになって、死のチェイスを繰り広げるというもの。ザ・ぼんち的に説明すると、A地点からB地点に行って、再びA地点に戻って来るだけ。
シンプルなストーリー故、中身はスカスカかというとそうではなく、ドロドロ、コテコテ、ギトギトの特濃状態。作品の世界観をみっちり作り込み、全編通してこれでもかというくらいバイオレンス&アクションシーンのアイデアを注ぎ込んでいます。
このジョージ・ミラー・メソッドを取り入れたのが、メル・DV・ギブソンが監督を務めた『パッション』。キリストがゴルゴダの丘で十字架に架けられるまでの道中を描いた作品で、こちらはA地点からB地点に行くのみ(処刑されるので帰りようがありません)。さらにメル・アル中・ギブソンはつづく監督作『アポカリブト』で、いよいよ『マッドマックス2』の“行って・戻って来る”プロットに着手。生け贄としてマヤ帝国につれて行かれた(A地点からB地点に行く)主人公ジャガーが、妻子を助けるために村へ逃げ帰る(B地点からA地点に戻る)だけの話なのですが、これがトンデモハプニングの雨あられで、超おもろいんです! メル・真性サド・ギブソンは人としては終わっているかもしれませんが、映画監督としては素晴しい才能の持ち主。ちなみにシルベスター・スタローンは『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』の監督を当初、彼に依頼したとのこと。さすが分かってらっしゃる!

弟子の狂った作品に刺激を受け、「小僧よ、オレこそがオリジナルだ!」とばかりに、今度は師匠のジョージ・ミラーが『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』をつくり上げる。この作品がどれだけの傑作なのかは今さらいうまでもないので省略しますが、ここで彼は自ら築いたメソッドに磨きをかけ、「映画にとってストーリーって何なの?」と考えさせられるくらいのレベルに到達しています。しかも、次々に繰り出されるアクションのアイデアは『アポカリブト』を凌ぐほど。70過ぎのおじいちゃんがつくったとはとても信じられない……。

彼らの作品が凄いのは、単にエグい描写をするのではなく(ジョージ・ミラーは直接的な描写はうまい具合に避けています)、どう見せるかを考えているところ。そして何といっても、空間的な位置関係を観客にしっかり伝えているところが素晴しい。今、誰がどの辺にいるのかが分かると、観客の緊張感を持続させるサスペンス度が段違いに高まる。当たり前のことですが、ちゃんとできている作品は滅多にありません。

さて、去年の暮れに第二次世界大戦の沖縄戦を描いたメル・ギブソンの新作『ハクソー・リッジ』がアメリカ公開され、こちらも凄まじい内容とのこと。『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』に刺激され、どんな映画をつくったのか、今から楽しみです。

posted by ichio