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2017.07.11

意外にまともだった『ハクソー・リッジ』

170706「朝イチの会議はキツい」と文句を垂れる会社員をチョコチョコ見ますが、そういう甘っちょろいことを言う人にはぜひ、朝イチの『ハクソー・リッジ』をお勧めしたい。僕は土曜日の午前9時に観賞したのですが、おとなしく家でテ朝パラ見ながら「ちっちゃいメープルメロンパン」を食べとけば良かったと後悔するくらいグッタリ疲れ果てました。おかげで午後からの仕事がまったくはかどらないあり様。まぁ、メル・ギブソン(以下、敬意を込めてメルと表記)の作品と知りながら無理のあるスケジューリングをした自分が悪いんですけどね。

メル10年ぶりの新作は、第二次世界大戦、沖縄の前田高地で繰り広げられた激戦に加わった衛生兵のお話。主人公のエドモンド・ドスは信仰心から武器を持つことを拒否し、人を殺すのではなく、助けるために戦争に行くという、かなり突き抜けた人。「そんな奴おらんやろ〜〜チッチキチ〜」と思っていたら、実在の人物だというのだからビックリです。
予告編では感動のヒーローものとして紹介をしていますが、『海猿』的なノリで行くと、えらい目に遭ってしまうので注意してください。先ほども申し上げたように、この映画はメルの監督作品です。たまにテレビ放送やレンタルで映画を見る人にとってメルは、「マッドマックス」シリーズや「リーサル・ウエポン」シリーズの俳優さんとして認知されていることでしょう。しかしこの人、監督としてかなりの才能の持ち主で、すごくクセが強い作品を撮り続けているんです。
どんなクセかといいますと、残酷シーンのメガ盛り。どれくらい残酷かというと、テレビでは絶対に放送できないくらいとだけ申し上げておきましょう。そんなシーンがほぼ始まりから終わりまでつづくのですから、たまったもんじゃありません。執拗に描くゴアシーンを目の当たりにすると、「この人、真性のドSやな」と感じざるをえません。ちなみにメルは、元奥さんへのDVが問題になったり、アル中で度々騒ぎを起こしたりしています。(そういう人だと知った今、昔の作品のメルがおどけたシーンを見直すと、完全にマッドで怖い)
実はメルにはもうひとつクセがありまして、どの作品にも“人は、自分が信じる道を貫き通すことができるのか?”というテーマが通底しています。これはメルが熱心なカトリック教徒で、結構コアなグループを支持していることが影響しています。キリストが十字架に架けられるまでの数時間を描いた『パッション』なんてモロ。
アル中のDV野郎で、宗教にのめり込んでるって、普通なら完全にアウト。しかし、こうして映画を撮り、アカデミー賞まで獲ってしまうところがメルなんです!

今作はどうかというと、確かにゴアシーンは盛りだくさんなんですが、それよりもメルの監督としての地力に目がいく出来。意外にまともというべきか、普通にすごいというべきか……。エドモンドが戦場に行くまでの無駄のない進行や、上官や仲間たちとの確執と理解を描くソツのなさは、キューブリックの『フルメタル・ジャケット』よりずっとスマート。戦闘シーンにしても、それぞれの位置関係が分かるように撮っている。これ、有名な監督でもできている人、少ないんですよね。この辺りはさすがジョージ・ミラーの弟子。
普通に感想をいえば、とんでもなく完成度が高く、素晴しい映画。でも、良くでき過ぎていて、パンチの利いたAVを期待してレンタルしたら、思いほかノーマルだった時のような寂しさを感じないでもありません。
僕たちはメルに“まとも”なんか期待していません。次は『アポカリプト』のように、もっとはっちゃけてもらって結構です。

posted by ichio