現在進行形でジャッキー・チェンを楽しむ
今の35歳以下の男子にとってジャッキー・チェンって、どういう存在なんでしょうか?
「昔のアクション俳優でしょ」「名前と顔は知ってるけど、映画は見たことない」という感じなんでしょうか。それとも「何ですか、それ」レベルなんでしょうか。ショックを受けそうで、知りたいような知りたくないような……。
40代真っただ中の男にとってジャッキー・チェンは、好き嫌いにかかわらず避けては通れない巨大な存在であり、人生や人格を形成するうえで影響を受けた人も少なくないでしょう。僕もその端くれの一人です。しかし上には上がいるもので、中学時代に本気でジャッキー・チェンを崇拝している“だまヤン”という友だちがいて、そいつはクラスメイトと本気のケンカになった時、酔拳の構えをして衝撃を受けたことを鮮明におぼえています。だまヤンの頭の中では映画のように敵を翻弄してノックダウンするシーンを思い描いていたのでしょうが、千鳥足になったところで騙されるワケないし、そもそも中学生が酒を飲んでるはずがありません。そんな当たり前のことがスッ飛ぶほど、当時のジャッキーの存在はデカかったんです。ちなみに、だまヤンは普通にヘッドロックされて頭をポコポコ殴られ負けました。
そんなジャッキーチルドレンな僕たちですが、正直なところ、当時の熱をキープしつづけている人はごくごくわずかでしょう。カミングアウトすると、僕の場合は『プロジェクトA』をピークに下降線を辿りはじめ、90年代に入ると『酔拳2』で一時的に盛り上がったものの、自己紹介でいきなり「ジャッキー・チェンが好きです」とは言えない感じになっていました。2000年以降は新作が出てもチェックすることなく、完全にスルーする状態がつづいています。
そんななか、CSで日本でのジャッキー人気に火をつけるきっかけとなったモンキーシリーズ3作(『スネーキーモンキー蛇拳』『ドランクモンキー酔拳』『クレージーモンキー笑拳』)が連続放送されたので何年かぶりに観ると、やっぱりメチャメチャおもしろい! 3作ともストーリーだけでなく出演俳優もほぼ同じで、カンフーシーンも冗長。テキトー感があふれ出ているのですが、そうした欠点を若いジャッキーのフレッシュな魅力とパワーが吹き飛ばしている。作りがチープであることが逆にジャッキーの凄さを際立たせているといってもよいほどです。(個人的には、いちばん地味な蛇拳が好きです)
これらの初期作を観て、僕は反省しました。子どもの頃に散々お世話になったのに、大人になったら無視するんかい!と。ジャッキーがリタイヤするまで見届けることが僕たちジャッキーチルドレンの務めではないのかと。いや、こんな言い方をするとジャッキーに失礼ですね。現在進行形の作品もおもしろいかもしれない。心のタンスからもう一度ジャッキー熱を取り出してきて、今の大人になった視点と組み合わせ、2000年代以降の作品も含めたジャッキームービーを楽しみたいと思います。