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2019.01.28

忙しさの報酬となった『恐怖の報酬』

20190128 去年の後半から年明けにかけて、『ボヘミアン・ラプソディ』『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』『斬、』『クリード 炎の宿敵』などの良作が立て続けに公開され、仕事で忙殺状態のなか、ちょっとした祭りになっていました。
 残念ながら近年稀に見るホラー/オカルトの傑作と誉れ高い『ヘレディタリー 継承』は、大好物なはずなのにグッときませんでした。ハンバーグがおいしいと評判の洋食屋さんに行ったら、上等な牛肉100%のハンバーグが出てきた時のような、“こういうのとちゃんねん感”とでもいいましょうか。でも、ビックリハウス的なホラーや適当につくったサイコパスもの、あるいは主演女優のトニー・コレットさんの顔芸ムービーではないなので(ただ、トニー・コレットさんの顔で恐度、陰惨度、おもしろ度ともに3割はアップしてます)、違う気分の時に観たらハマるのかもしれません。

 年末年始に観た映画のなかで思わぬ収穫だったのが、『恐怖の報酬』。『フレンチ・コネクション』や『エクソシスト』で知られるウィリアム・フリードキンがメガフォンをとった1977年公開のサスペンス・アクション大作。当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったフリードキンが2000万ドル(現在の100億円相当)という莫大な製作費を投じてつくった渾身作だったものの、結果は大コケ。この前代未聞の大失敗で、70年代から80年代にかけて中心的存在になるはずだったフリードキンは完全に失速してしまいました。

 コケた原因は、同時期に公開されて大ヒットしていた『スター・ウォーズ』の影響をモロに受けてしまったことに加え、映画会社が「長ったらしい」という理由で勝手に人間ドラマの部分をカットしたせいといわれています。映画会社はそんな黒歴史をなかったことにするために、この作品を長い間上映できないようにして闇に葬っていたというのだから酷い話です。
 フリードキンは相当に恨めしく思っていたようで、40年近く経った後にややこしい権利問題をクリアして自分がつくりたかった完全版として蘇らせ、世界各国の映画祭で上映したところ絶賛の嵐。それがいよいよ日本でも上映されるというのですから観ないワケにはいきません。とは言いながら、僕はこのエピソードはまったく知らず、短縮版も観たことはなく、たまたまチラシを見つけて「何か凄そう」と思って馳せ参じた“にわか”です。

 ですが、作品はそんなことを抜きにしてもサイコーでした。話は、油井の火災を消すために、ワケありの男たちが現地にニトロを運ぶという、どシンプルなストーリー。アクションもジャングルの中を軽トラが走るだけ。でも実はこれ、『マッドマックス2』や『マッドマックス 怒りのデスロード』、『アポカリプト』などの傑作と同じ、“行って帰ってくる”黄金の構成なんです。そして当たり前ですがCG一切なしで、嵐の中トラックで吊り橋を渡ったり、油井をぶっ飛ばしたり、ホンマにやってもうてる迫力は否定のしようがありません。『地獄の黙示録』と同類の狂気が充満しています。もう、こんな映画を撮ることは時代が許してくれないでしょう。ラストもアメリカン・ニューシネマの残り香があっり、男心をくすぐられます。
 ただ、前半に「ニトロをヘリコプターで運ぶのは振動が激しくて、ちょっと無理」という説明が入るのですが、どう考えてもトラックの方が危ないし、山道を走り出して3分あたりで絶対に大爆発を起こしてるはずというモヤモヤはぬぐえません。

posted by ichio