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2005年04月12日

『グランド・フィナーレ』

050412.jpg阿部和重の芥川賞受賞作『グランド・フィナーレ』を読む。話はロリコンのオッサンが仕事も家庭も失い、帰郷したところ可愛い女の子と出会ってしまいアタフタ…という内容で、舞台はまたまた神町。前作『シンセミア』は神町を俯瞰するマクロ的な視点だったのに対して、今作は変態オッサンの脳内世界。だから、作品の中で書かれていることが果たして本当のことなのかも疑わしい。ポストモダン文学でよく登場する「信頼できない語り部」ってヤツです。もし、ここに書かれていることが妄想・願望だと考えれば、どこかにまだ誰も知らないヤバい人間が潜んでいる訳で、一気にサイコホラー度がアップして楽しくなってきます。
この作品だけでみるとちょっと物足りなさを感じるかも知れませんが、他の作品も含めた「神町サーガ」のひとつとして読めばなかなか面白い作品です。(吾輩としては併録されている短編『馬小屋の乙女』の拡大版が読みたい)阿部の一連の作品を読めば読むほど、「こんな町、住みたくないなぁ」と思いますが、知らないだけで自分の住んでるところもこんな感じなんでしような。というか、もっとキツいとこに住んでいるような気がする。
ところで阿部和重に芥川賞あげるなら、『グランド・フィナーレ』より『シンセミア』であげた方がよかったんじゃないでしょうか?

posted by ichio : 00:06 | | trackback (0) |