最高のキーボーディスト
先日、途中で止めてしまった親父の話のつづき。(親父なんてカッコ良く言ってますが、ホントは「お父さん」と呼んでいます)京都には優れた音楽家が大勢いますが、その中でも吾輩は父親の才能に注目しています。ウチの親父は加山雄三的な器用さでクラリネットやフルートをこなすのですが、最も得意とするのがキーボードなんです。
話はそれますが、親父の器用さは本物で、家の仏壇や階段も全部自分でつくってしまいました。しかも素人がつくったとは思えない完成度。
そんな親父にとって音楽はストレス解消のためのお遊びで、仕事で疲れるとお気に入りの歌謡曲を歌ったり、弾いたりしています。今のようにキーボードが手軽に手に入らなかった時代はピアニカをブロウしておりました。しかしピアニカにはひとつ大きな問題が。そう、弾きながら歌えないのです。このどうしようもない現実を受け入れられないのか、親父はピアニカを吹く時いつもコルトレーンのような苦渋に満ちた表情を浮かべていました。その後かなり多機能なキーボードが安価で手に入るようになり、親父は待ってましたとばかりに即GET。それ以来、何かに取り憑かれたように「東京砂漠」を弾き語りしています。
吾輩が親父の音楽センスに注目しているのはここからなんです。どうも親父は両手弾きができないらしく、弾くのは主旋律のみ。つまり最初から最後までずっと自らのボーカルとユニゾンになっているのです。♪あなたがいれば〜、つらくはないわ〜♪と、どれだけソウルフルに歌っても、伴奏はちゃっちい音色が♪ポポポポポポポ〜♪と鳴っているだけ。しかもリズムボックスがマンボに設定されていてまったく歌に合っていない。普通なら他のリズムにするかオフにするのですが、そんなことはまったく気にせず悦に入っている。
吾輩はそんな親父の姿を笑いながらも、本気でカッコいいと思っています。もしかしたらダニエル・ジョンストンに優るとも劣らないピュアな心で音楽と向き合っているのかもしれません。