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2005年12月28日

ジパング・マジックリアリズム

051228.jpg最近読んだ小説の中でいちばん読みごたえがあった『ベルカ、吠えないのか?』(古川日出男)。何でこの本を選んだかというと、レコードハンター界で言うところのジャケ買い。古川日出男の小説は読んだことがなかったので、帯のセールスコピーを見てもどんな内容なのかピンと来なかったのですが、最初の数ページを読んだ時点でアタリの予感。
それもその筈、この小説は今年の直木賞候補になっていたらしい。と言っても吾輩にとって直木賞てなもんはアカデミー賞やグラミー賞と同じ感じなので、どれだけ凄いのかはまるで分かっていません。でもまぁ、とにかくこの作品は吾輩にとってかなり面白いものでした。
話は、軍用犬4頭からはじまるドッグ・ファミリーの数奇な運命を通して、‘戦争の世紀’である20世紀に迫るといった硬派な内容なんですが、眉間にシワを寄せることなく、ムツゴロウのイヌ社会モノを見ているような気楽な感じで楽しめます。文章も贅肉をそぎ落としたシンプルなスタイルなのに、エンタテイメント性もあって良い。古川って人、なかなか凄いですね。『アラビアの夜の種族』という作品も面白そうなので、お正月にチャレンジしようかと思っています。
ただ『ベルカ、吠えないのか?』に関しては登場するイヌが多くて、途中からどのイヌがどのイヌとどんな関係なのか分からんようになってくる。出来れば系譜図みたいなものを付けてほしかった。
吾輩はこの小説を読んで、古川日出男という作家をスティーヴ・エリクソンと重ね合わせてしまいました。北欧マジックリアリズムならぬジパング・マジックリアリズムのパイオニアだと思っていた久間十義が変な方向に行ってしまった今、是非とも古川にその後継者になってもらいたい。

posted by ichio : 23:38 | | trackback (0) |