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2007年02月09日

高瀬舟

070209.jpg昨晩、森鴎外の『高瀬舟』に似た夢を見る。吾輩を乗せた小舟が、真っ暗な真夜中の水路をギーコギーコと進む。船頭の水面を叩く音を聞くうちに、カラダだけでなく思考も過去へ遡るという、吾輩には珍しくカッコいい内容でした。(吾輩の見る夢はほとんどが追いかけられたり襲われたりする悪夢で、そこらへんのハリウッド映画よりもおもしろいんです)
それにしても『高瀬舟』、いいですよね。吾輩にとっては『羅生門』と並んで小説のおもしろさを教えてくれた一編です。出会いは国語の授業。先生が朗読するのを聞いて、小説というのは僅かなページ数でこんなに濃い世界を表現できるのかと驚きました。
話は同心の羽田庄兵衞が、弟殺しで捕まった喜助という男を高瀬舟で護送するところからはじまる。他の罪人とどこか違う雰囲気の喜助を見て、弟殺しに至った経緯を聞くうちに…。
もう、こうやってチョコチョコと書いているだけでゾクッとします。
この小説はとにかく文章が素晴らしい。静かなのに緊張感に満ちたミニマルな文章は、黒ずんだ夜の京の町を下る高瀬舟という設定にハマりまくっています。
小舟に乗る設定といい、善悪とは何かを問うテーマといい、どこか『地獄の黙示録』に似ている。どっちも作品の世界に入っていくうちに時間の感覚がねじ曲がっていくんですよね。
乱歩もいいですが、『高瀬舟』みたいなオールドクラシックも誰かに映像化してほしいものです。

posted by ichio : 01:38 | | trackback (0) |