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2008年04月10日

『ノー・カントリー』

080409.jpg久々に会心の出来だったんじゃないでしょうか、コーエン兄弟の『ノー・カントリー』。
『ビッグ・リボウスキ』以降テンションが徐々に下がり、近頃は劇場まで足を運ばなくなっていたのですが、今回はハビエル・バルデムの顔に惹かれて観に行ったら傑作といってもいいほどの出来映えでした。
もうとにかくハビエル・バルデム扮する殺し屋シガーがイカす! 最近登場したサイコキャラでは『デフプルーフ IN グラインドハウス』のスタント・マイクがピカイチだと思っていましたが、シガーの前ではかすんでしまいます。表情ひとつ変えずにバタバタ殺す姿は異様そのもの。(一度だけ意外なところで感情を表に出しますが)しかもランボーを凌ぐセルフ手術もやっちゃいます。
彼が何の論理に従って行動しているのかがまったく分からない。ある意味レクター博士より謎につつまれた存在です。
今作はコーエン兄弟初となる小説の映画化なんですが、彼らの作品に共通する「ボタンの掛け違い」と「サイクル」というテーマはしっかり描かれていました。ベトナム帰りの冴えない男ルウェリンが事件現場に戻るところは「ボタンの掛け違い」のお約束だし、「サイクル」もトミー・リー・ジョーンズ演じる保安官の最後のセリフで見事完成。
あと乾いたユーモアも健在で、ところどころに意味の分からないやりとりが挟み込まれ、‘今のは何だったの?’とキョトンとさせてくれます。
サスペンスの結末だって、腰がくだけるほどのあっけなさ。今まであれだけ丁寧に描いていたのにそれはないんじゃないの?!というくらい。これは明らかに意識的に描いたもので、‘人生ってそんなものさ’というコーエン兄弟の人生観が見えてきます。

この映画を観ると、間違いなく落ちいてるお金を着服するのが怖くなってしまいます。…もちろん吾輩は1円拾っても交番に届ける正直者です。

posted by ichio : 00:08 | | trackback (0) |