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2008年07月13日

人として生きる道

080713.jpg週末、体中の関節が張り、手足がシビレる怪症状におそわれる。
2日目には発熱と持病の偏頭痛も加わり、ほぼデッド状態。
そのせいで家族ぐるみで仲良くしてもらっているファミリーとのホームパーティーが延期になっただけでなく、週明けまでに出さないといけない台本の進行も遅れ、本日半泣きでお仕事。

さて本題。すごいです、この小説。ここ何年かのうちでいちばんの衝撃と感動を吾輩の乾いた心に刻みこんだ作品となりました。電車の中で読んでいることを忘れ、あまりの悲惨さに顔を歪め、あまりの切なさに涙を流してしまったほどです(例えでなく本当に)。
『ザ・ロード』(コーマック・マッカーシー)は、父と子ふたりがカートを押しながら南の地を求めてさまよい歩くという極めてシンプルなロードノベル。でも、その世界は核戦争で崩壊していて、理性を捨て獣になった輩がうろつき、食料も以前存在した文明がわずかに残した缶詰などがあるのみ。そんな絶望的な状況の中、父親は幼い少年を守るために敵と戦い、水と食べ物を得るために奔走するといった、『マッドマックス2』 meets 『子連れ狼』な話が繰り広げられます。
この作品を書いたのは、トマス・ピンチョンやドン・デリーロとならび現在のアメリカ文学を代表する作家コーマック・マッカーシー。コーエン兄弟が監督してアカデミー賞を獲得した『ノーカントリー』の原作『血と暴力の国』を書いた人です。とまぁ知ったかぶって書きましたが、彼の作品を読むのはこれがはじめて。『越境』が出た時に気になってはいたものの、何かC.W.ニコルみたいな感じがしてスルーしてました。
マッカーシーの文体は心理描写を排した超ミニマルなものなのに父と子の心の内が痛いほど伝わってくるし、朽ち果てた世界も目の前にあるように浮かび上がってきます。そしてラストの美しいこと!
傑作です。この作品を子どもを愛するすべての人にオススメします。

この小説を読んでいる間ずっと頭に浮かんでいたのがゾンビ映画。作中登場する理性をなくした人間というのが、まさにゾンビなんです。
ゾンビ映画といえば昔は笑いながら観る映画だったのに最近まったく笑えなくなったのは、現実の世界があんなふうになってもちっとも不思議でない状況だからだと分かりました。もし何らかの理由で文明が崩壊した時、多くの人が理性を捨てゾンビ化することはまず間違いないでしょう。というか、もうすでに今ゾンビ化する内的因子が人間の中にあるかもしれない。
それに地球温暖化の影響で人を狂わすウイルスが発生する可能性だってないとはいえないんじゃないでしょうか。
そんなゾンビワールドになった時、自分はどう生きるのか?
吾輩はとりあえず鞍馬山に避難しようかなと思ってます。なので皆さんは他のところに逃げてください。
…吾輩、ゾンビ化はじまってます?

posted by ichio : 20:36 | | trackback (0) |