60VISION
『60VISION』(ナガオカケンメイ)を読む。普段はビジネス書コーナーに並びそうな本はお説教クサイ気がしてほとんど読まないのですが、この本は「60VISION」発足からのドキュメンタリーということなので、2600円とちょい高めな価格設定にも関わらず買いました。
「60VISION」というのは‘60年代’をキーワードに、昔つくられた品質が良く、シンプルなデザインでながく使えるモノを今の時代に合ったカタチにアレンジして使い手に届ける、ナガオカ氏率いるD&DEPARTMENT PROJECTとメーカーが共同で行うプロジェクトです。
「60VISION」には、カリモクやコトブキ、アデリア、ムーンスター(吾輩的には月星のほうがシックリきます)など10社以上のメーカー(ブランド)が参加していて、魅力的な商品をつくっています。(でも、もうちょい値段を下げてほしい。正直、あの値段を出すなら 頑張って上のクラスのアイテムを買おうと思っちゃうんですよね)
で、本の方もプロジェクト同様すごくおもしろい。ナガオカ氏の好奇心とパワー、そしてメーカーの人たちとの関わり方がヒシヒシと伝わってきます。モノをつくったり企画することを仕事にしている人間にとっては、見習うべきことが多すぎです。特にクライアントと関わる姿勢には頭が下がりっぱなし。
「何でこんなことするかなぁ…」「完全にピント、ズレとんねん」「せかすだけせかしとして、なんで自分はルーズやねん」とボヤき、わめいているだけではダメなのです。
クライアントとはそういうもの。また、そういう状況になっている責任の一端は自分にもあるのです。だから、お互いが良い方向に進むようにアプローチしなければならないのです。
……果たして吾輩はこんな悟り人のような境地に辿り着くことができるのでしょうか。今の吾輩なんか、ブーブー文句垂れて屁こいで寝るだけですから。こんなふうに思える時は、ぜったい死期が近い時です。
しかしナガオカ氏は実際にこのような姿勢で取り組んでいらっしゃいます。すごいです。
それと「60VISION」で感じるのが、アイテムに力強さがあるということ。マーケティングとか効率化といった小賢しい考えからつくられたモノとは、姿は似ていてもまったく別物だということがわかります。
机の上だけでひねり出したモノって、なぜだかすぐ持っているのが恥ずかしくなりますよね。
吾輩はナガオカ氏が経営されているD&DEPARTMENTが好きです。
ここには氏が選んだ‘どこにでもあるけど忘れられたモノ’がいっぱいあって、目からウロコがボロボロ落ちます。はじめて行った時、さり気なくカップヌードルが売ってあって‘カップヌードルってこんなにカッコ良かったのか!’とビックリして、すぐさま買って帰り家に置いたら、やっぱりいつも通りのカップヌードルでした。