KITSCH PAPER

HOME BOOK DAIRY MOVIE MUSIC ETC
Oh my Buddha!It is such a wonderful site that it's unbelievable.
2009年06月30日

オジサンのプライド

090630.jpgここ何年かいろいろなメディアで自転車がクローズアップされています。移動といえば自転車というチャリンカーの吾輩にとっては嬉しいことなのですが、今までちょっとの距離でもクルマを使っていた人がいきなり高価な自転車を買ってエコがどうのと語っているのを聞くと、京都の老舗的なイケズをいってみたくなります。
たぶん、今朝出会ったオジサンも同じような心持ちだったのでしょう。吾輩が二条城の脇を愛車ブジョーで走っていると、急にスピード感覚といいますか自分がちゃんと前に進んでいるのか分からなくなる妙な感覚におそわれました。そしてすぐにその原因は前にいるオジサンであることを悟りました。
このオジサン、一見クールビズな服装で出勤中のごく普通のお方なのですが、どういうワケか両腕にお茶の入ったペットボトルを巻きつけ、かなりのスピードで後ろ向きに走っているのです。(しかも一切うしろを見ずに)Yシャツは汗でグッショリで、35キロ地点に差し掛かったマラソン選手のような苦渋に満ち満ちた表情をしていらっしゃる。どんなフレキシブルなセンスで受け止めても、かなり異様です。
この姿を見て一瞬吹き出しそうになったのですが、とんでもない間違いだと気づきました。このオジサンは、若者がスタイリッシュにジョギングするようになる遥か前から走っていらっしゃるのです。きっと雨の日も風の日も、前の晩に飲み過ぎた日も、同じく前の晩に男としてイマイチ調子が出ず落ち込んだ日も走っていらっしゃったに違いありません。それがいつの間にか走り方もなっちゃいないカッコだけイッチョマエな若造たちが澄ました顔で走り出し、オリジネーターとしての格の違いを見せつけてやろうと奮起した結果、このスタイルに行き着いたのです。そうです、腕に装着されたペットボトルは、ケータイを腕に巻いて走る若者へのアンサースタイルなのです。その証拠に、吾輩はペットボトルのお茶が減っていることを見逃しませんでした。これは、ケータイで数値として示される運動データの代わりなのです。‘実態のない数字よりも、目の前のお茶の減り具合こそがリアルなんだ!’という彼の心の叫びが吾輩には聞こえます。
アナログ派の吾輩はこの熱い姿勢に心を打たれ、‘ファイト!’と声をかけようとしたのですが、オジサンはそんな吾輩に目もくれずバックのまま横断歩道を渡り、京の街のどこかへと消えて行きました。
これって、新種の妖怪だったんでしょうか。顔ははっきりおぼえていないのですが、志賀廣太郎さん(写真)に似ていたような気がします。

posted by ichio : 00:42 | | trackback (0) |