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2009年08月02日

『デューン/砂の惑星』

090802.jpg『デューン/砂の惑星』…。この作品は、ながい映画の歴史の中でも屈指の失敗作といわれています。製作費として当時最高クラスの80億円を投じながらも、見事に大コケ。批評的にもコキ下ろされ、デビッド・リンチのフィルモグラフィーでも無視されているかわいそうな作品です。そればかりか、映画会社が夢と希望あふれる『スター・ウォーズ』路線で宣伝したため家族連れが劇場に来てしまい、ひたすら暗くてグロい代物を見せられた家族の怒りをかったとか。
そもそもこの作品は、つくりはじめた時からゴタゴタつづきでした。プロデューサーはビッグネーム、ディノ・デ・ラウレンティス(名前からして何かすごい)。この人はフェリーニの『道』からモンドエロSF『バーバレラ』、『キングコング』(最初のリメイクの方)、サム・ライミの珍作『キャプテン・スーパーマーケット』、『ハンニバル』まで手がけるスーパープロデューサー。そういうとカッコいいですが、要は節操がないということです。
そんなラウレンティス卿が監督として抜擢したのが怪人アレハンドロ・ホドロフスキー。しかし二人はモメにモメて、最後はホドロフスキーが「オレ様を誰だと思ってるんだ、ホドロフスキー様だぞ!!」という名言を残して去っていく。この後リドリー・スコットが引き継ぐのですがこれもうまくいかず、デビッド・リンチに白羽の矢が立ったというワケです。当時のリンチは『イレイザーヘッド』と『エレファントマン』を撮っただけのペイペイ。そんなインディーズ指向の新人が80億円の大作をまかされて、うまくいくはずがありません。で、結果は先述の通り。そんなどうしようもない作品なんですが、吾輩は好きです。
どこが素晴らしいかというと、全体の完成度を捨てて細部をリンチ色に染め上げているところ。ストーリーは分かりにくく、物語が動くところは全部ナレーションで済ませている。まさにドラマづくりの最悪なパターンです。しかも肝心の主人公の描写や特撮シーン、アクションシーンは完璧な手抜き。エンディングなんてホントにひどい。
じゃあどこにチカラを入れているのかというと、本筋とまったく関係のないグロシーンです。特に悪役のハルコネン家のシーンはかなりの気合いの入れよう。大将のハルコネン男爵は顔面できものだらけで、プチュブチュつぶして膿を出したりなんかしている。根っからの変態で、手下の心臓に仕掛けた弁を引っこ抜いて、血がドバドバ出るのを今にも射精するような顔つきで見ている。甥っ子のラバンも叔父に負けない変態で、ネズミをつぶしてチューチュー吸っている。こんな描写いるのか?
スティングも血の気の多いもう一人の甥っ子フェイド役で登場。そしてリンチにフンドシ姿にさせられています。でも、スティングが出た映画の中で、この役がいちばんカッコいい。
まだまだこの他にもリンチはやりたい放題。完全に80億円つかって、遊んでいる。こんなことをしてプロデューサーのラウレンティスは怒りまくったに違いないと思ったら、どうやらウマが合ったようで、この後『ブルー・ベルベット』で再びコンビを組んで、今度は興業的にも批評的にも大ヒット。映画ってよく分かりません。

posted by ichio : 20:49 | | trackback (0) |