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2009年09月08日

ハッキヨイ!せきトリくん

090908.jpg‘相撲は重心が低い方が良い’なんていいますが、日本相撲協会が新規ファン & 新弟子獲得のために重い腰を上げました。
近頃の角界はホントに問題のオンパレードで、お世辞にもいいイメージはありません。そんなゴタゴタ・イザコザの影響や時代の移り変わりのせいで、かつて連日満員御礼だった会場も今では空席が目立つありさま。
やっとこさ‘このままではマジ、ヤバいッス’と、自分たちが土俵際に追いつめられていることに気づき、何とかしなければと目をつけたのが、次の時代を担う子どもたち(広告代理店の入れ知恵でしょうが)。で、彼らの関心を高めるにはキャラクターがイチバン!ということで生まれたのが、『ハッキヨイ!せきトリくん』です。
このキャラをご覧になった多くの人は恐らくこう思ったんじゃないでしょうか。‘子どもの落書きじゃねえの?!’と。確かにそう見えますが、違います。一見完成度の低い造形に見えても、この中にはヒットさせるための方程式、言い換えると大人のワル知恵がつまっているのです。
まず、完成度の低そうな造形。これはいうまでもなく昨今の「ゆるキャラ」ブームにリンクしています。ゆるキャラとは、主に完成度が低くて妙な違和感を発散しているPRキャラクターのことをさします。ゆるキャラとして認められるためには、多くの人から(ここが重要)突っ込まれるスキがなければいけません。せきトリくんの場合、子どもが描いたような危なっかしいドローイングでこの条件をクリアしています。こうして吾輩が取り上げているのも、この効果といえるでしょう。さらに造形を簡素化することで、子どもたちも簡単に描けるというメリットが生まれます。いくら可愛かっても『北斗の拳』のようなキャラだったら気軽に描くことができず、自ずと親近感もわかず、結果定着しません。
次のポイントは駄洒落。ご覧の通り、せきトリくんにはクチバシがあり、鳥がモチーフになっていることは誰でもすぐに分かります。腹が立つほどくだらない駄洒落ですが、これがキャラをおぼえる重要なフックとなるのです。最近だと「地デジカ」もこのパターンに入ります。
他にもキャラクターのチカラをあらわすバラメーター設定、キャラクター間の相関関係の設定、細かいところでの遊びなど、ゲームやトレーディングカードに慣れ親しんだ子どもが食いつく要素がビッシリ詰め込まれています。
そんな計算し尽くされた せきトリくんですから、間違いなくそこそこヒットするでしょう。しかし、吾輩が見る限りこのキャラには爆発的なヒットを巻き起こす魅力はありません。要するにすべてがヒットするデータベースから引き出した記号の組み合わせに過ぎないのです。
本物の「ゆるキャラ」には日本人が忘れたくても忘れられない土着文化がこびりついていて、それが多くの人を魅了するのです。このことは、平城遷都1300年記念のキャラ「せんとくん」のフィーバーぶりでもお分かりかと思います。
せきトリくんが多くの人の心に刻まれるようになるためには、完膚なきまでにズッコケて、相撲史の珍事として伝説になるしかないでしょう。

posted by ichio : 22:34 | | trackback (0) |