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2009年11月22日

我慢の限界

091122.jpgTwitterと『地獄の黙示録』、このまったく関係のないふたつをつなげる共通項は何か。吾輩の場合はジム・ジャームッシュの新作『リミッツ・オブ・コントロール』でした。別につなげる必要はこれっぽっちもないんですが、この作品を観ているうちに何となくこのふたつが頭に浮かんできました。

この作品はいつものようにジャームッシュ節炸裂で、何も起こらないまま時間が進み、そして終わる。といってもそれは上映が終わっただけで、スクリーンの向こう側の時間はずっとつづくといった感じ。
主人公は「孤独な男」と呼ばれる殺し屋。‘自分こそ偉大だと思う男を墓場へ’というワケの分からん指令を受けて、次々に現れるこれまたワケの分からんメッセンジャーの指示に従いながらスペイン中ほっつき歩くというお話。お疲れ気味のカラダにこの展開はちょっとつらく、途中我慢の限界がきてウトウト。中盤から体勢を立て直し、何とかのりきりました。

吾輩が思うジャームッシュのテーマはふたつ。ひとつは、ディスコミュニケーション。彼の作品の登場人物たちはすれ違ってばかりで、仲良くなってもその場限り。事が済めば愛想もこいそもなく別れてしまいます。そもそも彼らは理解し合うなんてことは求めていないんですよね。人はそう簡単に理解し合うことなんかできないし、その必要もない。理解し合わなくても、それぞれの存在を認めることが大切ということじゃないでしょうか。
何か金八っつぁんみたいになってしまいましたが、自分と違う人がいっぱいいるんだなぁと思いながら屁をこいて寝るようなジャームッシュのスタンスが吾輩にはシックリきます。だからTwitterやmixiなんかのコミュニケーションや、フレンドリー重視なこの国の空気はどうも馴染めないんですよね。というか、気持ち悪くて我慢なりません。(と言いつつTwitterに登録して、どうつぶやいていいのか分からず放置状態なんですが…)
どっちにしても、もう少し‘孤独’というスタンスをポジティブにとらえる必要があるんじゃないかと強く思います。

さてさて話は映画に戻りまして、ジャームッシュのもうひとつのテーマは移動。彼のほとんどの作品の登場人物は旅をするというより彷徨っていて、今回の殺し屋の男も曖昧なミッションを遂行するために知らない土地を彷徨いつづけます。見えない展開とダルい音楽で、観ているこちらの時間感覚がぼやけてくるのは『地獄の黙示録』と同じ感触。これら2作のように空間移動と時間移動の感覚をシンクロさせる映画って、そんなにありません。ロードムーピーといわれるものの多くは「成長」「和解」というゴール目指しているので、観ている者は予定に沿って進む話に安心していられるのですが、『地獄の黙示録』や『リミッツ・オブ・コントロール』はそういう予定調和な展開にはなっていない。そういう意味でもこの作品は『デッドマン』の域には届かないにしても、そこそこの良作です。

posted by ichio : 18:12 | | trackback (0) |