KITSCH PAPER

HOME BOOK DAIRY MOVIE MUSIC ETC
Oh my Buddha!It is such a wonderful site that it's unbelievable.
2010年08月11日

農村の婦人

100811.png某本屋さんで1950年代に岩波書店から出ていた岩波写真文庫のバックナンバーを発見。『家庭の電気』『汽車』などグッとくるタイトルが並ぶ中、『農村の婦人〜南信濃の〜』をチョイス。まずもって写真が素晴らしいことと、サブタイトルにわざわざ南信濃「の」が付いている居心地の悪さに心を奪われました。
内容はタイトルの通り、農村で暮らす女性や子どもたちの暮らしぶりをクローズアップしたもので、全精力を注ぎ込んであるひとつのメッセージを伝えようとしています。それは、‘農村の婦人は悲惨だ’ということです。序文に農村婦人の現実を知ってほしいという筆者の想いが綴られており、その意気込みはビンビン伝わってくるのですが、いかんせん、過酷、苦渋、貧しい、惨めなど、ネガティブな言葉のオンパレードで、読んでいるうちに重たい気分になってきます。
確かに戦後間もない頃の農村はそうだったんでしょうけど、この本を読んだ農村婦人たちはきっとカチンときたんじゃないかと思います。飲み会なんかで自虐的なことを言って笑ってもらっている時にあんまり親しくない人が乗っかってきて、‘お前に言われたないわ’とイラッとくる、あの感じと同じだったに違いありません。
大げさでなくホントに最初からずっと農村婦人の報われなさが書かれていて、最後にやっと「明」という章が設けられ、これからの日本は農村の人たちの暮らしが豊かになるよう努力しなければならないと締めくくられていてホッとしたのも束の間、次の最後のページに「暗」という章が待ち受けており、やっぱり農村婦人は悲惨だとダメ押ししてきたのにはビックリしました。
ここで吾輩はピン!ときました。この筆者は調子にのっているなと。キャプションでも「なんとなく農家の庭先(の写真)なんかをならべてみた」と書いてあるなど、呑気というか高飛車なスタンスを感じなくもない。この本が出版された頃は高度成長期のはじまりで、都市部の人間が浮かれるのも分かりますが、やっぱり何かイラッとくる。今となっては写真だけ見た方が多くのことが伝わってくる気がします。

posted by ichio : 00:25 | | trackback (0) |