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2011年02月25日

『冷たい熱帯魚』

110225.jpg自分は何と、ちっぽけな人間か…。そう思うのは、カレーライスを食べる時にラッキョウが切れていて地味にテンションが下がるからでも、思いっきり口内炎を噛んで半ギレになるからでも、足の小指を打ちつけて必要以上に痛がるからでもなく、『冷たい熱帯魚』という映画を観たからです。
いやはや、凄まじい映画です。最近観た中で、これほど引きずる映画はちょっと思いあたりません。内容は、実際にあった愛犬家殺人事件をベースにしたサスペンスなんですが、スクリーンから放射される悪電波は娯楽の域を超えています。
その震源地となっているのが殺人鬼、村田。その存在感は、『羊たちの沈黙』のレクターや『セブン』のジョン・ドゥ、『ノー・カントリー』のシガー、『ダークナイト』のジョーカーと比べても引けをとりません。それどころか、今までのサイコキラーの重鎮たちは常人の理解が及ばない超人として存在していたのに対して、村田はひたすら欲のためだけに悪行を積み重ねる俗人で、生々しさにおいて遥かに彼らを凌駕しています。
一見、人なつっこいオッサンが突然ドス黒い本性をあらわにする恐怖。これは誰もが心のどこかに持っているもの。事実、映画が終った後、うしろの席に座っていた60歳くらいのアベック(夫婦という雰囲気でもないんですよね、これが)が、村田と同類の人なんじゃないかと、めちゃめちゃ怖くなってしまいました。
ジメジメ湿った空気からしか生まれない日本独自の「魔」。その質感を完璧にフィルムに閉じ込めた園子温監督、ただ者ではありません。

posted by ichio : 01:07 | | trackback (0) |