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2012年05月23日

ベタは語る

120523.jpgプラットホームで電車を待つオジさんがすることの定番といえば、ゴルフスイング。今ではお目にかかることが少なくなりましたが、この前、カラダをムズムズさせている“いかにも”なオジさんを発見。久々にいいものを拝めると期待していたら、そのオジさんはゴルフではなくピッチャーの構えをするではありませんか。そして大きくふりかぶった腕を振り下ろすと思いきや、阪急ブレーブスの伝説のエース、山田久志顔負けのアンダースローを披露してくれたのです。
「どんだけ野球好きやねん!」という気持ちはわき起るものの、このオジさんの行為が意味することはゴルフスイングと同じ。それは、ストレスがたまっている、あるいは羞恥心のパッキンがボロボロになっているということです。

このように多くの人が共有するイメージを利用して、特定の状態を表す手法は「ベタ」「ステレオタイプ」などと呼ばれ、映画やドラマなどで広く活用されています。
このベタを、食べ物だけに絞って書かれたエッセイ集が『コロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50』(福田里香)。福田さんはお菓子研究家ということですが、食べ物だけでなく映画にも詳しいご様子。斜から観る感じや文体が男性的で、「もしや男?」と思って調べたら、女性でした。居酒屋で話したら、かなりおもしろい方のような気がします。
エッセイでは、さまざまなベタなシチュエーションを取り上げ、それらが暗に何を表現しているのかが綴られています。特に興味深かったのが、失恋の後のヤケ食いに関する話と、遅刻しそうな女の子が食パンをくわえたまま家を出てステキな男子と衝突してしまう話。福田さんによると、女の人のヤケ食いは営みの代替行為であり、食パンは処女を表すアイコンなのだそう。言われてみたら、まったくその通り。
これだけだと何だかフロイトみたいな感じに思えてしまうかもしれませんが、そんなことはありません。楽しいフード理論がたくさん収録されていますので、ぜひチェックしてみてください。
もしかしたら、本屋さんでステキな人と同時にこの本を手に取ろうとして、恋が芽生えるかもしれませんよ。

ちなみにプラットホームで一人、エア山田をしていたオジさんは投球フォームを繰り返し、時おり首をひねったりしていました。どうやら脳内で、9回裏、2アウト満塁というシチュエーションが出来上がっていたようです。

posted by ichio : 22:05 | | trackback (0) |