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2013年05月07日

時間は繰り返す

130508.jpgハングマンのメンバー、タミー(夏樹陽子)とマリア(早乙女愛)にとっ捕まり、お仕置きされると覚悟したら、“今夜は帰さないわよ”と言われ、別ジャンルのお仕置きを受けるような、何度でも体験したい時間。
同じくハングマンのメンバー、ベニー(あべ静江)にとっ捕まり、壁に投げつけられるお仕置きを受けると覚悟したら、“今夜は帰さないわよ”と言われるような、1回きりでも御免こうむりたい時間。
同じ時間でも、内容はさまざま。
このような夢のような時間または悪夢のような時間が、“もし、繰り返されたら”と、想像したことは誰でも一度はあるでしょう。
熟女好き以外の人には分かりにくいかもしれないので他の例えをすると、日曜日の晩に「サザエさん」を観ていて、“あぁ、明日は学校かぁ…”とブルーになっているうちにウトウトしてしまい、気がつくと、まだ日曜の朝だったということが繰り返される感じといえばいいでしょうか。

こんな本を待っていた!
そう叫びたくなるのが『時間ループ物語論』(浅羽通明)。
タイトルの通り、時間が繰り返される設定を用いたフィクションについて語られた本です。
先ほど言ったように、朝起きたらたらどういうワケか、過ぎたはずの昨日がまたはじまっている…とか、事故や事件に巻き込まれて“死んでもーたぁ〜!”と思った瞬間に目が覚めて、周りを見ると死ぬ前の時間に戻っているという話、ちょくちょくありますよね。これまでこういう類いの話を見ると“ループもの”と、ぼんやり認識はしていたものの、深く考えたことかなかったので琴線にふれました。

時間ループもののバイブルとされる『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』はもちろんのこと、古今東西の小説や映画を取り上げて、タイプ分けや構造の分析をする手さばきは鮮やかの一言。ピックアップされている作品が幅広く、恒川光太郎の『秋の牢獄』、『魔法少女まどか☆マギカ』、夏目漱石の『夢十夜』などが一緒に登場する展開はなかなか新鮮です。
しかし、途中からどこか物足りなさを感じてきます。それは、この本がもともとは大学の講義で、分かりやすくしているからなのかもしれませんが、タイプ分けと表面的な構造分析にウエイトが置かれていて、背景についての考察が手薄になってしましたからではないでしょうか。おいしいハンバーグの焼き方が知りたいのに、牛の産地についてのウンチクを延々きかされている感じがするんです。
ハウス、テクノのループや、ヒップホップのスクラッチと関連づけるような飛躍があっても良かったと思います。
また、著者はオタクが大層嫌いなようで、彼らの体験を伴わない薄っぺらな物言いに対する批判をループさせているのですが、“自分も似てね?”と、イラッときたこともつけ加えておきましよう。
この本でループものの輪郭は大体つかめたので、今度は考察を掘り下げた第2弾を出していただきたいものです。
あと、『ダーク・シティ』や『トゥルーマン・ショー』など、ホントの世界は別にあるといった「箱庭世界系」についても書いていただけるとうれしい。

posted by ichio : 23:39 | | trackback (0) |