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2013年10月27日

リンチが再び輝きだす

131027.jpgまじめ仕事からおバカなキャンペーンソングの作詞まで頭がパンクするほどの忙しさに加え、プチ鬱になる資格充分なトラブルに巻き込まれ、ついでに愛車のプジョーのマウンテンバイクが修理から返ってきた次の日にブッ壊されるという惨劇に遭いながらも、そこそこゴキゲンに暮らしています。
ディープな経験をすると、誰もケチをつけられない正解ばかりが大手を振って闊歩する世の風潮をひっくり返す価値観が出てきてもいいんじゃないかと思います。

そんな僕の中で再び鈍く輝きだしているのがデヴィッド・リンチです。僕にとってリンチとは「反転の人」。感動作になるはずだった『エレファント・マン』やSF超大作になるはずだった『砂の惑星』を変態作品にひっくり返し、『ブルーベルベット』と『ワイルド・アット・ハート』ではオールディーズやプレスリーの曲を暗黒ソングに変換してしまいました。それは単に曲のイメージを変えるのではなく、すべてのものは見る角度によって姿を変えることを知らしめた革命といってもいいでしょう。リンチのこの姿勢は、『ブルーベルベット』のオープニングの、きれいな庭の下に蠢くアリの群れのシーンで宣言されています。
そんなリンチに対する世の中のイメージはエキセントリックな変わり者といったところではないでしょうか。でも、『デイビッド・リンチ』(クリス・ロドリー)という本を読むと、彼が極めて常識人だということが分かります。リンチが自分の作品について話す構成で、実にまじめに語っていて、この人の魅力が伝わってきます。
といっても作品の意味については一切語っておらず、そこがまたいい。日本のアーティストや作家さんは、何か意味の分からない話をウネウネと話しつづけ、「そのエピソードを反映した作品がこれですか?!」ということがよくあるので、リンチの潔さを見習ってほしいものです。
作品の意味は語らなくても、製作過程や感想なんかを丁寧に話してくれていて好感が持てます。こういう姿勢を目の当たりにすると、「ミュージックステーション」に出演したアーティストがタモさんの目も見ず、マイクもしっかり持たず、「オレ、こんな歌番組興味ないから」とばかりに、だらけた態度で話すことがいかにカッコ悪いかが分かります。
……、完全に話がズレてきてますね…。
普段の常識人としてのリンチが映画や絵をつくる時には人格が反転して、あの異様な世界をつくっているとますます興味がわいてきます。この本の表紙はそうしたリンチの特性をあらわしていると思います。

posted by ichio : 21:09 | | trackback (0) |