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2014年05月27日

引きずる小説、『金色機械』

140527.jpg「自分らしい、私でありたい」、「自分にウソはつきたくないから、思ったことはそのままいう」。
心に響くいいフレーズですね。でも、あんたが言うと、何か違和感を感じないワケでもないんですけど…。いや、やっぱりおかしいぞ。これって、単にワガママで横暴なだけとちがうんかい!
このように、最初は“いい感じ”に思えても、落ち着いて考えると「何じゃそりゃ?!」ということってよくありますよね。
恒川光太郎の目下最新作『金色機械』を読んだときも、同じような感覚になりました。
お話の舞台は江戸時代。内容は、山賊や遊郭にたずさわる人たちと、異形の存在「金色様」にまつわる不思議なサーガです。
おもしろい。ストーリーはさまざまなエピソードが交錯するかたちでハラハラするし、登場人物もキャラが立っている。恒川氏ならではのミニマムながら清涼感があり、ノスタルジックな文体もすばらしい。
でも、圧倒的な違和感が頭にこびりついて離れないんです。まず、タイトル。金色機械……。金色と機械……。う〜ん、見ればみるほど立ち上がってくるミスマッチ感。しかも「こんじき」ではなく、「きんいろ」。で、話のキーとなる「金色様(きんいろさま)」は、名前の通り全身ゴールドでメタリック仕様。そして、時おりピコピコと音を立て、緑の目を光らす……。
これって、C3POやないんですか!!
僕がおちょくり半分で言っているのではなくて、本当に誰が読んでもC3POそのものなんです。
そんなワケで、どんな場面も「ルーク様、ルーク様」と叫びながらテケテケ歩くC3POが頭に浮かんでしまい、物語の世界に入っていけそうで入れない、何とも気色の悪い感じになってしまいます。(念のために申し上げると、恒川光太郎という人はジャンル的にはダークファンタジーの作家です)
このトンマな設定がわざとであることは間違いないのですが、ねらいが分からない。松本人志が追い求める“哀しいけどおもろい”世界観を目指しているのか。
もしかしたら、この違和感はステップアップする前兆なのかもしれません。
妙に引きずります。

posted by ichio : 23:31 | | trackback (0) |