三羽烏のその後

10年ほど前にデビュー作・初期作品を観て勝手に若手三羽烏だと決めつけていた映画監督、クリストファー・ノーラン、ダーレン・アロノフスキー、ビンチェンゾ・ナタリの3人。その後それぞれ幾つかの作品を発表し、当時抱いた印象や期待からちょっとずつズレてきていてます。
まず、3人の中でいちばん目立った存在のクリストファー・ノーラン。長編2作目『メメント』が当たり、次につくったのが『インソムニア』という舌を噛みそうなタイトルのサスペンス。キャストはアル・パチーノ & ロビン・ウィリアムズと派手ながら内容は地味。『メメント』では奇をてらった構成が話題となりましたが、この作品ではオーソドックスなスタイルで物語を追っているのが印象的でした。しかし、内容的にはいまひとつ面白みに欠け、これは一発屋かなと思っていたのですが、『バットマン ビギンズ』で吾輩の見当違いだったことを思い知らされる。ここでは前作での物語を描くという試みが見事に花開いている。彼はこの先、大監督の道を歩むんじゃないでしょうか。（何や、雑誌のレビューもどきの文章になってきましたが気にせず続けます）
お次は『π』の斬新な映像で‘リンチ meets キューブリック’と騒がれたダーレン・アロノフスキー。『π』を観た時は正直この監督のすごさが分からなかったのですが、次の『レクイエム・フォー・ドリーム』で改心。ジェニファー・コネリーが墜ちてゆく淫らな姿を拝むだけでもドキドキだったのですが、さらに『π』でみせた編集テクニックを駆使しつつ、観客を楽しませる技も身につけていたのビックリ。次の作品を楽しみにしているのですが未だ沈黙したまま。
最後はシチュエーションムービーのさきがけ『キューブ』を送り出したビンチェンゾ・ナタリ。3人の中で最も期待していた人なんですが、作品を出す度にショボくなっている。『カンパニーマン』は往年のスパイ映画のフェイクになっていてそこそこ面白いのですが、あくまでそこそこレベルの面白さ。『NOTHING』に至ってはすべてが中途半端で完全に失敗。この作品を観ている途中、この人自身が消えてしまうんじゃないかと思いました。
今のところクリストファー・ノーランが頭一つ抜け出した感じですが（ビンチェンゾ・ナタリが頭ふたつ分くらい後退したともいえますが）、あとの二人の巻き返しに期待したいですね。
この文を書いていて‘お前は何様だ？！’と自分にツッコみたくなってきました。やっぱり吾輩はマゾです。