『ティンブクトゥ』〜ポール・オースター
やっぱり面白い、ポール・オースターは!
『リヴァイアサン』以降の作品は自分の好みと違う気がして読んでいなかったのですが、久々に新作『ティンブクトゥ』を読むことに。
今回のお話の主人公は、ミスター・ボーンズという犬。彼(犬)の視線を通して、放浪詩人であるご主人様ウィリーとの友情と別れ、そして新たな旅立ちを描いています。
こう書くと、流行りのお涙頂戴な小説っぽく聞こえますが、そこはポール・オースター。淡々としていながら、ちょっとユーモラスでストレンジな語り口で、読む者を引きつけます。それと、パートナーと言ってもいいくらいの柴田元幸氏の訳が素晴らしい。短い言葉で様々な感情やイメージを思い起こさせるって、凄いですよね。
オースターの作品にはどれも、「既存のジャンル(特にミステリー)のスタイルを意識的に利用する」、「何か起こりそうで、何も起こらない」、「他者と出会うことで、自分を見つめ直す」といった要素が盛り込まれているのですが、今作もこのスタイルはしっかり受け継がれています。
これって、凄く考え抜かれた構造ですよね。‘自分探し’をミステリー風にアレンジして読者の興味を持続させながら、ジャンルのスタイルをフェイクする面白さをエッセンスとして取り入れる。そして、‘何も起こらない’という肩すかしで、ジャンルに組み込まれることを回避している。
でも、骨組みだけでは小説にならない。そこに素晴らしい文章が加わることで、オースター印の作品となるわけです。
そんな素敵な『ティンブクトゥ』ですが、表紙と帯のコピーが気に入らない。犬の写真をデカデカと載せたおかげで、読んでいる間ずっと、この犬を思い浮かべてしまうじゃないの!それと‘泣ける小説’的な宣伝文句は、イヤな感じの商売っ気まる出しでいただけません。
comments
こんな新作が出てたとは知らんかった。
ポール・オースター版「我輩は猫である」ってわけですか?
この人と柴田氏のファンなので、これは買ってみます。
しかしこの表紙のワン公、かわいいけど確かにキャラ強いですな。
ボクもポール・オースターの大ファンでして、
『幽霊たち』はフェイバリットのひとつです。
以前、キャバ嬢を取材した時、
「オススメの小説は?」ときかれ、
つい本気になって『幽霊たち』をあげてしまいました。
「どんな小説なん?」と説明を求められたものの、
うまく魅力を伝えられなくて、かなり不可解な顔をされました。
セカチューでも出して、盛り上げるのが正解だったんでしょうね…。
Posted by: OKUMURA at 2006年10月31日 00:31あ、名前入れるの忘れてた。
俺です。
あ、名前入れるの忘れてた。
上のコメント、俺です。
ついさっき、買ってきました。
そうやと思ったけど、
念のため、丁寧語使っておきました。