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2021.08.26

山下達郎、恐るべし

210826 ローリング・ストーンズのドラマーであり、ロック史に名を刻むドラマー、チャーリー・ワッツが亡くなりました。スネアとハイハットを同時に叩かない独特のドラムスタイルは一聴するとスカスカに聴こえますが、キースのギターを引き立たせ、ストーンズならではのノリをつくっているのは、そんな彼のドラムあってこそと言っても言い過ぎではないでしょう。またメンバー間の関係においても、バンドのマーチャンダイズの監督としても、バンドになくてはならない存在でした。心よりご冥福をお祈りします。

 前回この夏いちばんYouTubeで見たのは御陣乗太鼓と申しましたが、この夏いちばん我が家のターンテーブルに乗ったアルバムはというと、ダントツで山下達郎の『フォー・ユー』です。
 これまで山下達郎はテレビから流れてくるのをつまみ聴きするくらいで、ほとんどスルー状態でした。ところが、カーティス・メイフィールドの「キープ・オン・トリッピン」や「トリッピング・アウト」「ネバー・ストップ・ラビング・ミー」といったクール系ソウルの名曲にカラダを揺らしていたところ、「ひょっとしたら山下達郎にもこんな感じの曲あるんとちゃうやろか」とひらめき、早速購入。

 「サブスクで聴いた方が手っ取り早いやん」というご意見があるのは重々承知しておりますが、僕の場合好きになるためには身銭を切らないとダメ派なので、今回も一切視聴せずに購入した次第です。こうした当てモノ感覚で買うと失敗した時のダメージは大きい反面、期待以上だった場合のうれしさは格別です。ちなみに2000円オーバーのアルバムだと、どんなにトホホな代物でも、死にもの狂いで好きなところを探さなければなりません。

 で、『フォー・ユー』は・・・・これ、世界レベルの名作ですやん!
 ソングライター、シンガーとしてのクオリティの高さはもちろんのこと、特に驚いたのがギタリストとしての素晴らしさ。シンプルでフックのあるフレーズをつくるセンスと、グルーヴを生みだす演奏力はただ者じゃありません。そして彼のギターが映えるのは、ボトムを支えるリズムユニット、A・I(ベース:伊藤広規、ドラム:青山純)の鉄壁なバックがあってこそ。

 どの曲もイカすのですが、なかでもワンフレーズで曲をグイグイ引っぱる「スパークル」や「ラブ・トーキン」の気持ち良さは、カーティス・メイフィールドとタメを張ります。
 ただし、さっき挙げたカーティスの曲が蒸し暑い夜を連想させるのに対して、達郎(馴れ馴れしいですが、そう呼ばせていただきます)の曲はピーカンの空に風が吹く、カラッと乾いたイメージ。もひとつ言うと、カーティスの曲からは人や街のニオイを感じるのに対して、達郎が歌う世界は無味無臭なところがおもしろい。もちろんどっちが良いという話ではなく、単に個人的なイメージです。

 その他に「ラブランド、アイランド」のような夏御用達のキラーチューンもあれば、じっくりと盛り上げる「ふたり」のようなバラードもある、さらに後半にはヘビーなファンクナンバー「ヘイ、リポーター」まで取り揃えた、天ぷら 屋さんの“まきの定食”状態。
 もともと僕は大仰な「ふたり」タイプのバラードは苦手で、達郎のボーカルもある意味ねばり気が強めなので胸焼けするところなんですが、不思議とサクッと聴けるんですよね。これは曲の良さに加えて、音楽の神様から授かった声によるところが大きいと思います。
 こんな名盤を今まで聴かずにいたのは、ずいぶん夏を損した気分にならないこともないですが、その分これから聴きまくってもとを取りたいと思います。

 余談ですが、僕と同じような達郎弱者の方も、このアルバムのカバーイラストは見たことあるんじゃないでしょうか。描いたのは80年代を代表するイラストレーター、鈴木英人。僕も小学生か中学生の頃、彼のイラストがプリントされた缶ペンを持ってました。同じくこの時代を象徴する永井博のイラストもあわせて、何周かまわって今すごく新鮮に見えます。

posted by ichio