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2008年07月29日

ノスタルジーとの出会い

080729.jpg時々まったく馴染みのない風景にノスタルジーを感じることがありますが、あれは何なんでしょう。
昭和初期の街なみやのどかな田園風景なんかを見ると‘あの頃は良かったなぁ’としみじみしてしまいますが、もちろんそんな時代 吾輩は影も形もありませんし、バリバリの街中育ちです。
こうやって考えると、自分と直接関わりがなくても、失われたものや失われつつあるものにノスタルジーを感じるのかもしれません。
じゃあ、澁谷征司の『BIRTH』という写真集はどう考えればいいんでしょう。
ここに収められている写真は何の変哲もない外国のオフィスやスタジオ、閑散とした町や自然の風景ばかりなのに強烈なノスタルジーが漂っているんです。別に失われたものでも失われつつあるものでもありません。
ここでしばし頭を空っぽにして(もともと空っぽですが)イメージの海を泳いでみる。
すると、これらの写真には独特の空気感が刻み込まれていて、それが自分の中で失われつつある感覚と結びついていることが分かってきました。
勿体ぶった言い方になってしまいましたが、要するに写真を見ていて‘あぁ、最近のんびりと時間を過ごしていないなぁ’‘情報にがんじがらめになっているなぁ’と感じたりするってことです。こういう気づきって、まさにタイトルになっている‘BIRTH’ですよね。
こんなふうに暮らしのテンポを改めて考えさせてくれるきっかけはそうそうありません。中にはそれを躍起になって探している人もいますが。吾輩は澁谷征司という写真家のことはまったく知りませんが、本屋さんで彼の写真を見た時、とても大切なものに出会った気がして迷わず手に入れました。というのはウソでして、5000円もするので2カ月以上悩みに悩んだ末購入。こういうセコさ、何とかならんもんですかねぇ。

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2008年07月22日

ライ・クーダーはサイコーだー!

080722.jpg天才ギタリストにして、ルーツミュージック番長でもあるライ・クーダーが新作『アイ, フラットヘッド』をドロップ。
これは『チャベス・ラヴィーン』『マイ・ネーム・イズ・バディ』に続くカリフォルニア3部作の完結編にあたり、同時にライ・クーダー自身が書いた同名小説に登場するミュージシャンの作品集になっているらしい。
まぁそんなコンセプトはどうでもよくて、ライ・クーダーの新作に触れられることが何より肝心。
80年〜90年代はほとんどアルバムを出さなかったのに、21世紀に入ってから既に4枚のアルバムを発表。しかもすべて傑作! この怒濤の快進撃はなんなんでしょうか。日本が誇る音楽王、細野晴臣さんも感心してはります。
今回の『アイ, フラットヘッド』も期待通り、サイコーです。 『チャベス・ラヴィーン』や『マンボ・シヌエンド』をよりポップにした、まさに21世紀型ライ・クーダーの最新バージョンという感じ。

彼の音楽の魅力は、今作のジャケットのように一見古くさいのに実はとってもモダンなところ。「レトロ・フューチャー」なんて言葉がありますが、彼の場合はもっと奥行きと広がりが感じられる内容になっているところが凄い。専門的なことは分かりませんがアレンジひとつとっても、色んなアイデアやセンスがつまっていて、単なるルーツミュージックとは違う仕上がりになっているんですよねぇ。
そして音が抜群にいい。彼の音へのこだわりは相当なようで、ライブをやらなくなったのは自分の頭の中で鳴っている音がライブでは表現できないからとのこと。
そんなこといわずに是非とも来日公演してほしいものです。

posted by ichio : 23:36 | | trackback (0) |
2008年07月18日

ニュース番組の怪

080718.jpg最近、テレビのニュース番組を見ていて気になるのが、ミニチュア模型と小型カメラを使った演出。
事件・事故の現場の模型をつくり、小型カメラを使って当事者目線で説明する、アレです。
位置関係を把握しやすいように、そして臨場感を出して伝えることが主なねらいだと思われます。吾輩も‘ふむふむ、なるほど’と見入ってしまうのですが、しばらくすると妙な違和感におそわれます。模型のクオリティ、ユルすぎないか?と。
厚紙を切り貼りした子どもの工作レベルなんて当たり前。この前なんかレゴかダイアかは知りませんが、市販のブロック(しかも色は適当で四角く積み上げただけ)を同潤会アパートに見立てている番組がありました。
どんなつくりだったのかを伝えるためなんでしょうが、それなら図と写真で説明してもらった方がはるかに分かりやすい。
いくらこれを小型カメラでなめても、ブロックを接写しているだけにしか見えませんから。
さらにコメンテーターの発言の合間合間に意味ありげにこのブロックのかたまりを映し出すんです。でも、何度見ても、どう見ても、それはただのブロックなんですよねぇ…。

また他にも、こんなトンマな演出がありました。それはニュース番組のメインキャスターがブッシュ大統領にインタビューするという企画だったのですが、誰がどう見てもキャスターは英語が達者でない様子。
‘はろう、みすたあ ぷれじでんと’という挨拶を聞いた瞬間、「いくらバカっぽく見えても、かりにもアメリカ大統領のインタビューによくもこんな英語力のキャスターを寄こしたな!」と怒られるんとちゃうやろか?と心配になってしまうくらい。
しかしキャスターは吾輩の心配など無視して、得意気に質問を続けるではありませんか。しかも番組はノーカットで質問している様子を流し続ける。
やっとこさぎこちない質問が終わり、ブッシュ大統領が話し出すのを聞いてさらにビックリ。何と、ブッシュのコメントがアフレコになっているのです。普通は字幕でしょ。
無名の一般人ならまだしも、バカっぽく見えるとはいえアメリカ大統領にアフレコをかますという処理はあまりお目にかかったことがありません。これは暗にブッシュ大統領が一般人レベルの内容しか話していないという番組からのメッセージなんでしょうか。
それはそれとしても、カタカナ発音の英語をそのまま流し、ネイティブの英語に日本語のアフレコをかぶせる演出は、かなりのストレンジワールドです。

posted by ichio : 18:00 | | trackback (0) |
2008年07月13日

人として生きる道

080713.jpg週末、体中の関節が張り、手足がシビレる怪症状におそわれる。
2日目には発熱と持病の偏頭痛も加わり、ほぼデッド状態。
そのせいで家族ぐるみで仲良くしてもらっているファミリーとのホームパーティーが延期になっただけでなく、週明けまでに出さないといけない台本の進行も遅れ、本日半泣きでお仕事。

さて本題。すごいです、この小説。ここ何年かのうちでいちばんの衝撃と感動を吾輩の乾いた心に刻みこんだ作品となりました。電車の中で読んでいることを忘れ、あまりの悲惨さに顔を歪め、あまりの切なさに涙を流してしまったほどです(例えでなく本当に)。
『ザ・ロード』(コーマック・マッカーシー)は、父と子ふたりがカートを押しながら南の地を求めてさまよい歩くという極めてシンプルなロードノベル。でも、その世界は核戦争で崩壊していて、理性を捨て獣になった輩がうろつき、食料も以前存在した文明がわずかに残した缶詰などがあるのみ。そんな絶望的な状況の中、父親は幼い少年を守るために敵と戦い、水と食べ物を得るために奔走するといった、『マッドマックス2』 meets 『子連れ狼』な話が繰り広げられます。
この作品を書いたのは、トマス・ピンチョンやドン・デリーロとならび現在のアメリカ文学を代表する作家コーマック・マッカーシー。コーエン兄弟が監督してアカデミー賞を獲得した『ノーカントリー』の原作『血と暴力の国』を書いた人です。とまぁ知ったかぶって書きましたが、彼の作品を読むのはこれがはじめて。『越境』が出た時に気になってはいたものの、何かC.W.ニコルみたいな感じがしてスルーしてました。
マッカーシーの文体は心理描写を排した超ミニマルなものなのに父と子の心の内が痛いほど伝わってくるし、朽ち果てた世界も目の前にあるように浮かび上がってきます。そしてラストの美しいこと!
傑作です。この作品を子どもを愛するすべての人にオススメします。

この小説を読んでいる間ずっと頭に浮かんでいたのがゾンビ映画。作中登場する理性をなくした人間というのが、まさにゾンビなんです。
ゾンビ映画といえば昔は笑いながら観る映画だったのに最近まったく笑えなくなったのは、現実の世界があんなふうになってもちっとも不思議でない状況だからだと分かりました。もし何らかの理由で文明が崩壊した時、多くの人が理性を捨てゾンビ化することはまず間違いないでしょう。というか、もうすでに今ゾンビ化する内的因子が人間の中にあるかもしれない。
それに地球温暖化の影響で人を狂わすウイルスが発生する可能性だってないとはいえないんじゃないでしょうか。
そんなゾンビワールドになった時、自分はどう生きるのか?
吾輩はとりあえず鞍馬山に避難しようかなと思ってます。なので皆さんは他のところに逃げてください。
…吾輩、ゾンビ化はじまってます?

posted by ichio : 20:36 | | trackback (0) |
2008年07月09日

アニキの意気込み

080709.jpg阪神タイガースは金本・下柳・矢野が活躍するアニキ祭で盛り上がっていますが、我が心のアニキ ポール・ウェラーも負けずに気合いの新作『22 ドリームス』をドロップ。
まだ移動中にi Podでしか聴いていないのですが、‘えらい とっ散らかってるなぁ’という印象。1曲目からしてドノヴァンみたいな曲だし、大味なロックチューンあり、スタカンを思わす甘い曲あり、怪しいエレクトロニカ風の曲ありと、まさにやりたい放題。アルバム全体としてだけでなく、曲単位でみても ゴッタ煮気味。
雑誌のレビューは良いのか悪いのか分からない曖昧な内容のものがほとんど(もはや批判的なことがいえない存在になっちゃった?)ですが、個人的には好きでない。
せっかく前作『アズ・イズ・ナウ』で焦点がビシッと合ったアルバムづくりに成功し、何度目かの絶頂期を迎えつつあることを感じさせてくれたのに、ちょっと肩すかしをくらった感じです。
本人はウェラー流“ホワイトアルバム”を目指したといっているので、バラエティに富んだ作風を狙っていたことは確か。
でも長年のファンとしては、『カフェ・ブリョ』のB面や『コスト・オブ・ラヴィング』あたりの散漫さとダブってしまうんですよね。ちょっと心配です。
彼には、歳をとって声に深味も出てきたことだし、超甘口なAORアルバムを出してほしい。この企画が成功することは、ちょっと前に出たライブ盤『キャッチ・フレイム』に収録されていた「ロング・ホット・サマー」を聴いて確信しています。

余談ですが、本作のカバーに載っているアニキがフレッドペリーのシャツを着ている写真にシビれ、吾輩もフレッドペリーでイカすTシャツをゲット。ファンになっておよそ20年、まだまだ熱はさめていません。

posted by ichio : 00:18 | | trackback (0) |
2008年07月05日

カオスな人

080705.jpg吾輩がいつも利用しているレンタルDVD店はヒット作・話題作しかないお店なんですが、この前行ったらどういうワケかヴェルナー・ヘルツォークの『キンスキー、我が最愛の敵』が置いてあるのを発見。あまりの唐突さに笑ってしまいました。(お店の人に何でこの作品を仕入れたのか訊きたい)
前から観たいと思っていたので夏目ナナの『ド淫乱高級痴女』とカップリングでレンタル。
『ド淫乱〜』の内容は大方お分かりだと思いますので『キンスキー〜』の方だけご説明しますと、ニュー・ジャーマン・シネマを代表する映画監督のヴェルナー・ヘルツォークが、数多くの作品でコンビを組んだ怪優クラウス・キンスキーについての思い出をボソボソ語るだけの極めて地味なドキュメントです。
クラウス・キンスキーがかなり変わったお人であることは本か雑誌かを見て知っていましたが、予想をはるかに上回るブッ飛び&ひん曲がりように驚きました。それはもう、お医者さんに診てもらうことをおすすめするくらい。
アイロンのあて方が気に入らなかっただけで48時間休みなくわめきつづけたり、自分からジャングルで撮影しようと言いながら蚊が1匹いただけで‘ごらぁ! 何でこんなところに蚊がいるんじぁ〜!’と怒り狂ったり、スタッフが撮影後 お酒を飲んで盛り上がっているのにヤキモチを焼いてショットガンをブチかましたり(しかも命中)といった変人エピソードのオンパレード。こんな人が身近にいなくて良かったと言いたいところなんですが、機嫌の悪い時のオカンとちょっとダブってしまいます。
時折当時の撮影風景が挿入されるのですが、その怒りようが尋常でなく、別の意味でこわくなってきます。そしてさらに、当時真剣にキンスキー殺害を目論んだというとんでもないことを表情ひとつ変えずに語るヘルツォークも猛烈にこわい。
映画はキンスキーが蝶々と戯れるシーンで終わるのですが、その屈託のない表情を見ると一瞬‘何てピュアな人なんだ’と思ってしまいそうになりますが、やっぱりどう考えてもおかしい人です。

この作品や『地獄の黙示録』のドキュメント『ハート・オブ・ダークネス』を観ると、映画づくりの現場は超クセ者の集まりで巨大なカオスが渦巻いていることが伝わってきます。トラブルなく終わることを念じる吾輩の姿勢とは大違いです。(と言いつつ思っていることを口あるいは顔に出して うっとうしがられるタイプです)

posted by ichio : 00:26 | | trackback (0) |
2008年07月01日

神戸に小旅行

080701.jpg週末、家族3人で神戸へ旅行に行ってきました。
旅行はおチビが生まれてからはじめてのなのでかなり久々。
予定としてはおチビが楽しめるスポットに行きつついろいろなお店をまわるという感じで、行ってみたい家具屋さんや雑貨屋さんなんかをチェックしていました。
天気予報を見ると週末ずっと雨になっていたので行けるお店は限られてくるだろうなと覚悟していたのですが、いやぁ予想以上に難儀しました。つれ合いは優先順位が最高位のお店のみ、吾輩にいたっては1軒もお目当てのお店に行けませんでした。(本屋にダッシュで行って夜に読む本を買うのがやっと)
夕食も小さな子どもをつれて入れそうな洋食屋さんに行ったものの、大人しく席についていることができず大急ぎで退散。何を注文したのかはかろうじて覚えていますが、味はいっさい記憶にございません。
ワインをちびちび飲みながら食事を愉しむイメージだったのに、ビールでビフカツを流し込むことになろうとは。つれ合いの話によると吾輩の顔は怒りを抑えるのに必死で、能面のようになっていたとのこと。
結局夜も少しでも灯りをつけるとおチビが起きそうになるので本は読めず。つれ合いも疲れ果てて早々に爆睡。せっかくいいホテルに来たのだからこのまま寝てしまうのはもったいな過ぎるので上の階にあるバーにでも行こうかなと思ったのですが、ひとりでお酒を飲めるタイプでないことを思い出し断念。(神戸に住んでいる友だちを呼び出そうかとも考えたのですが何となくスルー)しかたなく真っ暗な部屋で空調の微調整をしながらボーッとしてました。
おチビの予想外の行動のせいでこっちの思惑通りにいかないと“仕事を詰めてやっとこさ来たのにこのざまか!’と真剣に腹が立つのですが、ホテルの窓から夜景を見て‘おそと、ち(き)れいやな’というひと言を聞いたり、嬉しそうにはしゃいでいる顔を見るとそんな気分も一瞬にして晴れるんですよね。
あと、街で吾輩とつれ合いに手をつながせようとするのは超プリティと思う反面、恥ずかしくてワキに小汗かきます。
そんなこんなで疲労困憊の2日間でしたが、これに懲りずにまた行きたいと思います。

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