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2015.09.30

想定外の状況に出くわした時、人はどうするのか

150929 考えられへん! ということは、毎日の生活の中であると思います。そしてその大半は、腹立つ“あるある”的な想定内の出来事だったりします。
 しかし僕の場合、本当に“考えられへん!”光景にしばしば遭遇するのです。例えば、道端でおじいちゃんがスキージャンプの滑走ポーズをしているので目を凝らして見ると、ケツ丸出しにして脱糞していました。
 また、真昼の四条河原町でカッパ黄桜のテーマ曲を歌いながら、自分のカッパを出して上下にプルンプルン振り回している陽気なオジさんを見たこともあります。
 また、小学生の時、ナイフを持って野球グランドを走り回るという、変わったトレーニングをしている男性に出会ったこともあります。(すぐ警察官に止められていましたが)
さらに、京阪三条から河原町御池までの間で、市バスが10台くらい数珠つなぎになっているのを見たこともあります!(これ地味ですが、いちばん凄くないですか?)
 このように、あり得ないと思っていることがいきなり目の前に現れても、何ら不思議ではありません。そして、不条理な状況下でどのようなリアクションをとるかは、人間の本質に関わることなんじゃないかと思うワケです。(ちなみに僕は上記の状況に出くわした時、何をするでもなく、ただ「ウワウワ」と声を出していだだけでした)

 それを分かりやすいカタチで表現したのが、カフカの小説『変身』です。あり得ない状況を唐突に提示する手法は、小説において定番のひとつ。その中で“変身”を扱っている作品は数知れず。『変身』はその名作とされる作品ですが、吉村萬壱の『臣女』も仲間に加えていただきたい。いや、臨場感という点でいえば、『変身』のはるか上をいっていると思います。
 『変身』は主人公が毒虫に変身した“さま”を三人称で語っているのに対し、『臣女』は主人公の妻が巨大化していく“さま”を一人称で語っているのがミソ。この微妙な距離感がリアルなんです。さらに、この作品ではクサい臭いについて執拗に描かれているのが特徴。臭いって、動物としてのプリミティブな感覚に直結しているので生々しいんですよね。ワキの臭いを嗅ぐことが密かな愉しみという話を人から聞くと、ちょっと引くけど内心「分かる、それ〜!」と、激しく共感するあの感じ。その感覚が凄みとなって押し寄せてきます。
 このように話のコアな部分がリアルなので、読んでいるうちに「もし自分が同じ目に遭ったらどうするのか?」を考えずにはいられません。夫婦円満のため僕の答えはひかえますが、つれ合いが巨大化するよりも、自分が巨大化した方がどれだけ楽かと思ったことは確かです。

 吉村萬壱さん、芥川賞を受賞した『ハリガネムシ』はいまいちピンと来なかったのですが、『臣女』を読んでイメージ変わりました。次の『ボラード病』も良いみたいだし、遅ればせながら要チェック人物リストに再登場です。

posted by ichio