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2023.03.01

期待に胸膨らませた『デヴィッド・フィンチャー マインドゲーム』

230201 待ちに待ったデヴィッド・フィンチャー──話題になったミュージックビデオやCMを数々手掛けた後、『エイリアン3』〜リドリー・スコット監督(これまた話題になったミュージックビデオやCMを数々手掛けた)からはじまった人気シリーズの3作目〜のメガフォンをとり、以来『セブン』、『ファイト・クラブ』、『ゾディアック』などを監督した──の評論本『デヴィッド・フィンチャー マインドゲーム』──本格的な彼の評論本はおそらく本著が初かも?──が発売(2,000部限定)され、購入いたしました。

『エイリアン3』からデヴィッド・フィンチャーのファンである私は期待に胸踊らせてページを開けたのですが・・・・・・。
 基本的にこのブログでは取り上げるものに対してネガティブなことは書かないようにしていて、たとえ文句じみたことを書いたとしても愛をもって書くように心がけています。しかしッ! 今回は「これはないでしょ」と感じたガッカリ体験を述べさせていただきたいと思います。
 その前に、本の制作に携わった方々の多大なる尽力には敬意を表します。しかしながら世に出された作品は常識的な範囲で批評・批判に晒されることを前提とされているとご理解いただきたい。どうぞ、ご容赦くださいませ。

 何をそんなに鼻息を荒くしているのかと申しますと、原因の大半は、訳の不満です。とにかく読みづらい! 決してむずかしい語句が並べられているわけではないのですが、とにかく読みづらく、内容が頭に入ってこないんです。
 大きな要因は、この投稿の出だしの文章のように、本文中に挿入される文が多いこと。少しばかり誇張して書きましたが、本物も大して変わらず本文を読みはじめるとすぐに「──かくがくしかじか──」、「(かくがくしかじか)」と挿入文が尋常じゃないほど入り、そのたびに視線の流れが遮られて集中できないんです。ひろゆきさんに言わせれば「それってあなたの感想ですよね」で済まされることかもしれませんが、同じように感じた人は少なくないんじゃないでしょうか。余談ですが、人の感想・感覚が軽んじられる風潮は、かなり危ないと感じています。(これも単なる感想ですが)

 話をもとに戻しまして、私は原文を見ていないのでわかりませんが、「挿入文が多いのは原文がそうだから」という事情があるのかもしれません。しかし、たとえそうであっても日本語に訳して読みづらいのであれば、原文の意図やニュアンスを崩さない範囲で読みやすくするトーン・マナーを考えるべき。
 訳された日本語をちょっと読んだだけでも、「このフレーズをここにもってきて、こことつなげるだけで読みやすくなるのでは」というところがたくさんあります。

 この読みにくさ、どこかで経験したことがあるような気がして、訳者を確認したところ、いやな予感が的中。『クリストファー・ノーランの嘘/思想で読む映画論』と同じ人ではありませんか。
 実はこの本も楽しみにしていて発売後すぐに購入したのですが、『デヴィッド・フィンチャー マインドゲーム』とまったく同じく、挿入文の多さと訳文のぎこちなさに蕁麻疹が出そうになり、本としては高価ながら泣く泣く古本屋さんに売ったかなしい過去があります。
 この時は一瞬、心理学について書かれたところも少なからずあるのでとっつきにくいのかなと思ったものの、「いやいや、訳が原因だわ」という結論に至った次第です。ふたつの本の著者は別人で、読みにくさがまったく同じということは、やはり訳者のクセが原因であることは間違いないでしょう。

 今回の購入にあたり、「あの時の訳者だったらどうしよう」という不安がなかったわけではありません。しかし「まさかそんなことはないだろう」と楽観視して、事前にチェックするのを怠ってしまいました。そういう意味では、今回の不満の原因は僕にあります。が、それでもやはり、もうちょっと読みやすさに留意してほしかったですね。

 不満に感じたことは、この他にもふたつあります。ひとつは紙質。もう少し良い紙を使っていただけませんかね。本のサイズがそこそこ大きく、ページ数も多ので、フニャフニャになってしまいますやん! 
 もうひとつは、背表紙のタイトルデザイン。何の創意もないフォントを無造作に使って、カタカナで『デヴィッド・フィンチャー マインドゲーム』はないでしょ。オモテ表紙のデザインとのギャップが大き過ぎです。5,000円近くもして、2,000部限定と打ち出すのなら、ひとつひとつのディテールに気を配っていただきたかった。発売元のディスクユニオンさん、お願いしますッ!
 さて、これから心を整えて負の感情を薄め、楽しく続きを読みたいと思います。

posted by ichio