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2022.06.19

最近の読書事情

220619 自分が老眼になっていると気づいたのは、今から約15年前。まだ小さかった子どもの足の爪を切ろうとしたら、いまいちピントが合わったにもかかわらず、安全爪切りということで攻めの姿勢で押し通したところ、横っちょの身もちょこっと削ってしまったのがはじまりです。
 この時は疲れ目と思っていたのですが、次第に対象物から離れれば離れるほどピントが合うという怪現象に気づき、つれ合いに話したところ老眼であることが発覚しました。それから老眼は加速度的に進行しつづけ、今ではスマホを見る際にピントを合わすためには、自分の腕の長さでは足りないほどです。同じ「LOGAN(老眼の人)」ならおわかりいただけると思いますが、これ、冗談ヌキで本当です。

 老眼は日常生活のあらゆる面に影響を及ぼし、特に読書はモロです。僕は外ではグラデーションタイプの遠近両用メガネを使っているのですが、家では古い近眼用メガネを使っているため、小さな字が見えんのです。文庫本は「目が疲れてしゃぁないな」という感じで、CDに付いているライナーノーツになると、ゴマ粒が並べられているようにしか見えません。
(まったく関係ない話ですが、この前、素でメガネのことを「アイウェア」と言う人に出会いました)

 そんなワケでここ数年、読書量はめきめき減っています。ここで開き直ると知識のインプットが減り、感覚的な加齢も進んでしまうので、最近は意識して本を読む時間をつくるようにしています。
 そのなかで印象深かったのが、『思いがけず利他』(西島岳志)と、『自転車泥棒』(呉明益)。
 『思いがけず利他』は、近代日本政治思想を専攻する大学教授が、「利他とは何か」について紐解いてくれる指南書。ここ数年感じていた世の中に対する違和感や居心地の悪さの“もと”がわかりやすく書かれていて、思わず膝を打ちました。何の前知識もなく、タイトルと表紙のイラスト(丹野杏香)に惹かれて購入したのですが、当りでした。

 『自転車泥棒』も書店で偶然見つけた、台湾の作家による小説。映画の名作と同じタイトルということで手に取り、出だしを読んだところ、瞬殺されました。シンプルな言葉しか使われていないのに、イメージがどんどん広がるんです。このあたりは、天野健太郎さん訳も大きく貢献しているんじゃないでしょうか。
 お話はいくつかの時間軸がまじりながら進み、ノスタルジックかつ幻想的な雰囲気があふれていて、村上春樹さんを思い浮かべる一面も。かなりおもしろかったです。この作家の作品は他にもいくつか翻訳されているので、筋金入りのLOGANになる前に読みたいと思っています。
 まぁ、家用のメガネを買い換えれば問題解決する話なんですけど。

posted by ichio