祝 『三体』 完結!
ついに完結!! いやぁ、長かった・・・・。
こんなことを言ったら、登場人物の方々から「そっちはたかが2年。こっちは何百年、いや何億年もしんどい思いしてるんや」と叱られるでしょう。
中国(中華圏)SF小説の傑作であり、空前のヒットシリーズ「三体」の最終作『三体Ⅲ 死神永生』上下巻の日本語版がこの度発売され、壮大なスケールの物語の結末を拝むことができました!
まずはこんなおもしろい小説を書いてくださった劉慈欣さん、翻訳者の方々をはじめとする関係各位にお礼を述べたいと思います。ありがとうございましたッ!
ネタバレしないようにアマゾンの紹介文レベルであらすじを書くと、物語は文化大革命時代の中国からはじまります。目の前で父親を殺された少女、葉文潔は、エリート天文物理学者になってからも苦難の人生を歩み、人類に絶望します。
ここまでは虚構の世界ではよくある話ですが、その後の彼女の行動がブッ飛んでいます。何と、「私は地球人と申します。自分で言うのもなんですが、私たちはどうしようもないクソなので、ヤキを入れてやってください」というメッセージを宇宙に送ったのです。
昨今SNSでこうしたことをのたまう人がいるのは存じていますが、宇宙に配信する人はなかなかいないのではないでしょうか。
そして、さらに驚いたことに葉文潔が送ったメッセージは、宇宙の彼方にいる、地球よりも遥かに進んだ文明をもつ三体人に届いたのです。
洗練された高度な知性で地球人を良き方向へ導いてくれると思ったら、三体人は地球人以上にクソだった・・・・。
地球の存在を知った三体人は、すぐさま乗っ取り作戦を開始。彼らの艦隊が地球に到着するのは400年後。それまでに人類は三体人に打ち勝つ術を見つけることができるのか?!というのが話の大筋。
とにかく序盤からスピード感がハンパなく、読みだしたら止まらないのが「三体」シリーズの魅力。門外漢からすると、今のSF小説って細かいことをむずかしくチネチネ書いているイメージがあったのですが、「三体」シリーズは小さいことはお構いなしに、勢いで話を進めていくところが爽快です。
実は「三体」シリーズは、第二部『三体Ⅱ 暗黒森林』で一応の決着はついていまして、そこからどう展開するのかいろいろ想像をめぐらせていたのですが、『三体Ⅲ 死神永生』は僕のセコい想像力を遥かに上回るスケールだったのはもちろん、予想外の角度から攻めてきました。スピード感もさらにアップ。特に上巻の地球人と三体人が巻き起こす事態の描写は、僕の大好きな小説『ゼウスガーデン衰亡史』とダブるところがあり、楽しさ倍増。
下巻になると作者のイマジネーションがますます加速して、振り落とされないようにしがみつくことで精一杯でした。
レビューを見ると、第三部の主人公である美人科学者が不評のようですが(「三体」シリーズは部ごとに主人公が変わるんです)、僕的には彼女のすっとこどっこい感は映画『プロメテウス』と『エイリアン コヴェナント』で抗体ができていたので、拒否反応は起きませんでした。
ボリューミーではありますが、むずかしいところはこれっぽっちもなく、エンターテインメントのど真ん中を行く作品なので、時間をつくってでも読んでください。
幸い僕はこの半月、YouTubeで金村義明さんの野球漫談を見まくるほどヒマだったので、サクサク読むことができました。・・・・って、全然うれしないわ!