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2018.05.16

画期的なジャズ論で、スタンプの「それな!」の違和感解消

180516去年から忙殺状態がつづいていたり、自宅のパソコンが逝ってしまったりで、更新が滞っていました。仕事もひと段落し、心の平安を取り戻してきたので、ぼちぼち再開したいと思います。

子どもとLINEのやり取りをしていると、「それな!」というスタンプがたまに送られてきます。どこのどいつか分からないキャラクターに半笑いで「それな!」と言われる度に、共感を得たうれしさを感じると同時に、まじめに考えて出した意見に対する返しの軽さに、ビミョーな違和感をおぼえていました(あくまでスタンプを送ってくれた子どもにではなく、キャラクターに)。しかし、ついこの前、「それな!」を書いた本人に送りつけたい本に出会ったのです。

本の紹介をする前に、少しオレ話をさせてください。
僕は20代半ばまでブラックミュージックが苦手でした。歌も演奏もめちゃめちゃ上手くて滑らかな感じが、当時の僕には甘過ぎたのだと思います。もちろんブラックミュージックには強いメッセージ性を打ち出した音楽や、引き締まったビートが炸裂する硬質な音楽も多くあり、今では“滑らかでメロウ”というイメージが偏ったものだったと分かります。
歳を重ねるなかでそんな思い込みも薄れ、最近はハードなものだけでなく、若い頃苦手だったメロウなもの(さらにコテコテなムーディなものでさえ)も大好物です。この辺の感じは、牛肉ばかり食べて喜んでいたガキンチョが、菜っ葉とおあげさんの炊いたんをありがたそうに食べるオッサンになった様を想像してもらうと伝わりやすいかもしれません。

そういう好みの変化とは別のところで、何となく、今スパイク・リーの『マルコムX』を観たらおもしろいんじゃないだろうかという気がして、約20年ぶりに観賞。劇場公開時は、「おもしろくないワケじゃないけど、いまいちグッとこない」という感じで、今回改めて観た感想もそれほど変わりませんでした。
しかし、再観賞がきっかけで、マルコムXが活動していた時代のブラックミュージックと、その後のブラックミュージックを紐づけて聴く楽しさを発見。ジャズ、ソウル、ファンク、レゲエ、ヒップホップなどスタイルは問わず、そのなかに流れるグルーヴを軸にして聴くのが新鮮でした。特に昔は背伸びして聴いていた後期コルトレーンやエリック・ドルフィー、ファラオ・サンダースなどのフリージャズが放つバイヴ(アホっぽい表現で恥ずかしい)がジワ〜としみ込んできました。
また、自分のなかのグルーブ・チェーンはすぐにロバート・グラスパーやディアンジェロ、さらにはケンドリック・ラマーともつながり、興奮をおぼえました。自分が何に興奮しているのかを考えてみたところ、「新しいジャズの捉え方とビート感覚」がキーワードになっていることはボンヤリと浮き出てきたものの、ピントが絞りきれず、ボヤ〜としたままでした。エロ関連なら、自分がどこで興奮してるのか簡単に分かるんですけどね。

そんな時に出会ったのが、『Jazz Thing ジャズという何か ジャズが追い求めたサウンドをめぐって』(原 雅明)でした。「Jazz Thing」とは、スパイク・リーが『マルコムX』の2年前に手掛けた『モ・ベター・ブルース』の挿入曲で、ジャズの王道に身を置きながらロックやヒップホップにもアプローチしていたブランフォード・マルサリスと、90年代のヒップホップを牽引したDJプレミアがタッグを組んだエポックメイキングな曲。本のタイトルと出だしに、この曲をもってきた時点で、僕的には「それな!」の連打!
この本で展開されている音楽評論のコンセプトは、これまで語られてきた“真っ当な”ジャズ史〜ジャズ論ではなく、伝統的なジャズと現在のソウルやヒップホップといったブラックミュージックを直結させて、新たな音楽の在り方・聴き方を提示しようとする試み。これはまさに僕がボンヤリと関心をもっていた、「新しいジャズの捉え方とビート感覚」に対する答えでした。
マイルス・デイビス、ハービー・ハンコック、オーネット・コールマンが新たなジャズを模索していた歴史にはじまり、70年代から80年代にかけてのロフトジャズやフュージョン、90年代に活発化したジャズとヒップホップの融合、クエストラヴやコモン、ディアンジェロ、エリカ・バドゥ、ロイ・ハーグローヴといった、ヒップホップ、ソウル、ジャズの先鋭が集まったソウルクエリアンズ、そしてテン年代をリードするロバート・グラスパー人脈やカマシ・ワシントンの活動までをつなげる展開は、ずっと目からウロコ状態。特に驚きだったのは、こうしたブラックミュージックのウラ鉱脈と、アメリカーナをつなげる視点が盛り込まれていたこと。僕のなかでこれらは完全に別モノだったのですが、おかげで新しいグルーヴ・チェーンをもつことができました。情報量もハンパなく、ホントに勉強になります。
この本を読んだ人と「それな!」を送り合えることができれば、すごくうれしいです。

posted by ichio