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2020.09.27

名刑事の名裁き

8200927 知り合いと話をする際、配偶者のことを何といいますか。
 男性なら嫁さん・奥さん・女房・家内、女性なら夫・主人・旦那・パパといったところでしょうか。
 でもまぁ、これは話す相手との関係性や、話の内容、ノリで変わってきますね。

 「いやぁ、うちのかみさんがね」 
 この人は、今となっては珍しい“かみさん派”です。
 “この人”が誰だかすぐに分かった人の大半は、40オーバーのおじさんでしょう。
 正解は、刑事コロンボ。ロサンゼルス市警察殺人課の警部。正確には主に1960年代後半から1970年代後半にかけてアメリカで制作された、サスペンスドラマの主人公です。
 ズングリした体型で髪の毛はボサボサ、くたびれたコートを着て、いつも安物の葉巻をくわえている中年刑事といえば、「あぁアレね」となるんじゃないでしようか。
 日本では最初NHKで放送されたのですが、僕はその後の「水曜ロードショー〜金曜ロードショー」で見ていました。

 ドラマの内容はパターンが決まっていて、出だしに犯人が殺人を犯し、コロンボが完全犯罪を切り崩すというもの。視聴者は最初から犯人が誰か分かっていて、コロンボが犯人を追い込んでいく様を追うのがキモになっています。
 先ほどの「いやぁ、うちのかみさんがね」 というのはコロンボの口癖で、犯人(大半は社会的地位の高い人物)に根掘り葉掘り質問するイントロになっているでんです。

 YouTubeで偶然、米粒写経と映画評論家の松﨑健夫氏の『刑事コロンボ』をテーマにしたトークイベントを観たのをきっかけに、コロンボ熱が上昇。アマゾンでDVDセットをポチッてしまいました。
 
 かなり久々に観たけれど、やっぱりおもしろい。
 「初対面の時から犯人と疑ってないか?」「そんな落とし方じゃ裁判で負けるでしょ」といったツッコミは不要。そんなことは重要ではありません。
 一見冴えないコロンボが、高い知能と地位、プライドを持った犯人に小馬鹿にされながらもネチネチ、ジワジワと追い込んでいく過程を見て、最後に「ざま〜!」「お見事!」と膝を叩くのが醍醐味なんです。要するに、映画ライター、ギンティ小林氏命名「ナメてた相手が実は殺人マシーンでした映画」の敏腕刑事版。
 
 改めて観直すと、コロンボの「もうひとつ訊きたいことを忘れてました」攻撃のしつこさと、意外に中盤の段階で「あんたが犯人だとにらんでいる」と挑発する押しの強さにビックリ。
 あと、犯人を自白に追い込む罠は、「性格が悪いんじゃないの」「謎解きを楽しんでるんじゃないか」疑惑が湧いてきます。

 普通ならツッコミどころ満載な話をおもしろくしているのは、まず脚本のクオリティの高さ。単にトリックが巧妙というだけでなく、犯人と被害者の関係性やその背後にある生活、はたまた犯人とコロンボの関係性がきちんと描けている。
 そして脚本に説得力を持たせる、主演のピーター・フォークとゲスト俳優の演技も忘れてはいけません。ピーター・フォークは『カリフォルニア・ドールズ』でもいい味出してました。いい役者さんです。吹き替えの小池朝雄さんもサイコー。

 ちなみに僕のフェイバリットの話は、「別れのワイン」で決まりです。
 

posted by ichio