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2020.10.24

天才の仕業にふれる喜び

201023 『ダークナイト』以来、ちょっとずつこちらの期待値を下回る作品をつくりつづけているクリストファー・ノーラン。
 「もう、おうち鑑賞でいいかな」と思いながらも、新作が公開されるとついつい劇場に足を運んでしまう状態がつづいています。
 考えてみると、彼の作品で手放しに好きといえるのは『バットマン・ビギンズ』と『ダークナイト』(がんばって『インターステラー』)くらいで、後は観終わった後に何かモヤモヤするんですよね。
 そんなテンションにもかかわらず、話題に釣られて『テネット』を観るために映画館へ。彼の“ゴキブリホイホイ力”は当代随一といえるでしょう。

 感想を申し上げますと、今作はほとんど期待していなかった分、それなりに楽しめました。時間が逆行するアクションシーンは絶妙に気持ち悪くてインパクト大。CGに頼らないIMAXカメラによる映像も有無をいわせない迫力です。(パズルの答え合わせ的なつくりは興味をそそられません)
 が、それでもやっぱり中盤以降の鈍重な展開や、アクションシーンで登場人物の位置関係を観客に理解させる空間掌握力など、彼のウィークポイントは相変わらず。特に空間掌握力は結構重症で、誰がどこにいるのかが分からないため、せっかく派手に動きまわってもらってもハラハラしない。それどころか、「これ、どんなってるんスか?」とフラストレーションを感じてしまうんです。この点に関しては、『CASSHERN』を撮った紀里谷監督と共通するような・・・・。

 これに比べるとマーベル作品はすごくうまい。あれだけ多くのキャラクターが暴れまくっているのに、まったく混乱しません。ノーラン監督と同じく『ユージュアル・サスペクツ』以降、微妙な作品を撮りつづけているブライアン・シンガーでさえ、『X-MEN:フューチャー&パスト』における序盤のアクションシーンではちゃんとしてました。
 偉そうに文句ばっかり並べてますが、新作が公開されたらまた劇場に行っちゃうんでしょうね。

 今回取り上げたかったのは『テネット』ではなく、『メイキング・オブ・モータウン』というドキュメンタリー映画でした。
 60年代〜70年代にかけて尋常じゃないクオリティの名曲を連発し、数々の天才ミュージシャンを世に送りたした「モータウン」というアメリカのレコード・レーベルの歴史を紐解く内容なんですが、コレがよく出来ていて滅法おもしろいんです。

 まず、当たり前ですが、作中に流れる音楽が素晴らし過ぎる! 特に洋楽に詳しくない人でも一度は聴いたことのあるメロディが、「これでもか!」という勢いで鼓膜と心を揺さぶるんです。これだけで涙がツーッと流れ落ちます。サウンドもリマスタリングされ、クリアかつ迫力ある音になっていてグッドです。
 それにしても、普通の住宅をオフィス兼スタジオに改造した地方都市の小さなレーベルに、スモーキー・ロビンソン、マーヴィン・ゲイ、スティービー・ワンダー、マイケル・ジャクソンといったド級の天才が所属していたというのは奇跡としかいえません。

 しかし、レーベルの創設者であるベリー・ゴーディにしてみれば、それは偶然ではなく必然。
 彼は若い頃に働いていた自動車工場の徹底的に管理された生産システムを、音楽業界に導入するという新しいビジネスモデルをつくったんです。このビジネスモデルは、ジャニーズやK-POPなどのベースになっています。
 才能発掘、楽曲制作、品質管理、タレントのプロデュースなどをシームレスに行う方法は、音楽業界だけでなくどんな世界でも参考になること間違いなしです。
 僕も仕事でこのシステムを取り入れて、できる限り厳しく自己管理しようと思っているのですが、もう一人の自分にとことんダメ出しされるともう逃げ道がなくなるのでペンディングしています。

 そして、最大の見所は何といっても、ベリー・ゴーディと、彼の相棒であり会社の副社長でもあったスモーキー・ロビンソンとのわちゃわちゃ感全開のトーク。とにかく楽しそうで元気。歯の白さも新庄超えレベル! とても90歳と80歳のおじいちゃんには見えません。
 ラストに当時の関係者が嫌がる“ある”歌を、二人で嬉々として歌うシーンは最高です。
 自分の功績を振り返るということで、影の部分は軽くふれる程度ですが、なかったことにしていないところに好感が持てます。

 編集も凝っていて飽きさせないつくりになっているので、「何かおもしろい映画やってないかな」という人は、ぜひ映画館まで足を運んでください。

posted by ichio