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2022.03.25

今度のバットマンは金田一耕助だ!

221025(内容にふれるのでご注意ください)

 やっとこさ映画の劇場公開がいつも通りに戻りつつあるこの頃。気になる作品も結構あり、ちょこちょこ劇場に足を運んでいます。かねてから話題になっていた『ザ・バットマン』もそのひとつ。ティム・バートン版から数えて何回目の仕切り直しか分からなくなるくらい“こすりまくり”のネタですが、新作が公開されるとついつい観てしまうんですよね。

 というワケで行ってきました。正直なところ、バットマンのシリアス路線といいますか、中2病お悩み路線は『ダークナイト』でお腹いっぱいになっており、『ダークナイト ライジング』の煮えきらず、やっと動いたと思ったら開き直った態度のブルース・ウェインにイライラ。『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』ではスーパーマンとのしんきくさい揉め事につき合わされ、「何をワケのわからんこと言うとるねん?!」と、どうでもよくなってしまいました。
 今からすると、公開当時は暗いと批判されていたティム・バートン版の何とヌケの良いこと!

 そんなこともあり、今回の『ザ・バットマン』の予告を観た時も「またお悩み路線じゃないの・・・・」と不安を感じておりました。が、幸いこっちの予想を“ある程度”は裏切ってくれました。まぁ今回も悩みはするのですが、それほどウジウジせず行動に移してくれるので、観ている方はノリやすい。最近のバットマンになかった小気味よいテンポが戻ってきたのはうれしい限りです。

 僕の観終わった直後の感想は、“ダイ・ハード3 meets 金田一”。犯人になぞなぞを出題されて相棒と街中を駆けずり回るという設定が、『ダイ・ハード3』と同じという指摘は多くの人がしていますが、それと同じくらい市川崑の金田一耕助シリーズに似ています。

 ざっと思いつくだけでも、暗くおどろおどろしいムード、犯人のケレン味あふれる犯行手口、登場人物たちが「よおし、わかったぁ〜!」と言いながら犯人のトラップに引っかかりまくるところ、事件のカギが過去の出来事や家族に関連していること、結局のところ事件解決に役立っていない主人公のボンクラ感などなど。おまけに話の展開や人間関係が込み入ってくると、わかりやすいように相関図を書いてくれる親切設計まで同じ。冗談抜きで脚本を担当したマット・リーブス(監督兼任)とピーター・クレイグは金田一シリーズを観たことあるんじゃないでしょうか。
 また、善人面した著名人の悪事を晒しまくる敵役のリドラーは、“史上最狂の知能犯”というより、“度が過ぎたガーシーの模倣犯”といった方がしっくりくる感じです。

 一見、クリストファー・ノーラン版のシリアス〜お悩み路線を引き継いでいるように見せながら、キュートさやオフビートなユーモアを散りばめているところが、この作品の大きな魅力であるのは間違いないでしょう。
 バットマンが蒼くさいユルさを残しているのもそのひとつ。今回のブルース・ウェインはバットマン歴2年という設定でしたが、にしてはあまりにも悪党の言うことを鵜呑みにして右往左往し、ゴードンに「しっかりしろ!」と叱られるのが何とも微笑ましい。挙げ句には、あまりになぞなぞが解けないため、リドラーに素で呆れられる始末。最後の問題も近くに警官がいなければ解けていなかったじゃないの!
 これは貶しているのではありません。褒めているのです。D.I.Y.感満載のマスクや、ハイテクになり過ぎない武器の性能具合もふくめ、未完成感がステキです。
 久々にゴッサムシティが存在感を放っていたのも良かった。街そのものがモンスターであることを視覚的に表現した撮影のグリーグ・フレイザー、美術のジェームズ・チンランド、グッジョブです。

 そして、バットマンがジタバタ動いたものの、リドラーの企みを何ひとつ防げなかったことに気づき、利他的な行動をとる姿は最近のダークヒーローものにはなかった納得感がありました。おそらくそれは、バットマンが自分の力を越えた巨大な何かを痛切し、目の前にいる人を救うというヒーローとしての宿命を背負ったことが、映像として描かれていたからなのでしょう。

 次作につづく種もいろいろ蒔かれているので、これからもバットマンとのおつき合いはつづきそうです。

posted by ichio